◇世界スーパーバンタム級4団体タイトルマッチ12回戦 井上尚弥―金芸俊(2025年1月24日 東京・有明アリーナ)
【浜田剛史の目】井上と金芸俊とでは力の差があった。1回は様子を見て、2回は上下に打ち分け、3回はボディーを効かせて、4回に仕留める。予定通りの組み立てだったと思う。
2回には相手のパンチを3、4発もらう場面があった。1回で相手の力量を知り、余裕を持ちすぎたのだろう。ただ、2回終了後、セコンドの父・真吾トレーナーは「油断するな」とすぐさま引き締めた。最高のコンビネーションだった。
直前で変更となった相手との一戦は簡単ではない。過去にはまだ無名だったパッキャオが2週間前に代役での世界挑戦が決まり、王者に勝って出世のきっかけにしたこともある。井上もずっとグッドマンを想定して右構えの相手とスパーリングをしてきた中、スイッチする金芸俊は左構えできて、やりにくさはあっただろう。パンチをもらったが、戦いながらしっかり対応した。
相手や日程が変わるアクシデントがあっても常に冷静でいられる精神力を含めて、やはり井上は総合力の高い選手だ。(帝拳ジム代表、元WBC世界スーパーライト級王者)