ソフトバンクに新加入した上沢直之投手(30)が25日、福岡県筑後市のファーム施設を初訪問し、自主トレを公開した。昨季の米球界挑戦後に日本ハムへは戻らず、国内ライバル球団への移籍を決断。古巣の新庄監督には厳しい言葉を投げつけられたが、「しっかり野球で頑張りたい」と前を向いた。2023年にキャリアハイの170イニングを投げたフォームに戻し、開幕ローテーション入りを狙う。
上沢の声は低く、それが冷静さを際立たせていた。古巣・日本ハムの新庄監督が米挑戦から1年後にライバル球団に移籍した右腕に対し「育て方が違った」など辛口のぼやきを続けている。球界の話題を集めているが、落ち着いて、かわした。
「どこに行ってもやることは変わらない。しっかり自分の野球をやるだけ。そこに関しては変わることはない。しっかり野球で頑張りたいと思います」
前だけを向き、野球に集中する。この日、筑後ファーム施設を初めて訪れ、屋内練習場でDeNAから移籍した上茶谷を相手に遠投。あえて軽く、ゆったりした間で投げた。「アメリカでは先発をしてない。もう一度、先発をやりたい。長い回、球数に向けてメカニックを気にしてやっています」。昨季は力んでバランスを崩したことを糧に、投球時に脱力を意識し「リリースまでに力が入ると強さが出ない。なるべく体の中心で投げる」。理想型がキャリアハイ170投球回を投げた23年型のフォームだ。
国内復帰を決断した理由に昨秋の右肘負傷もあったが、回復は順調。「現状は6、7割」と自主トレを行った宮古島では4度のブルペン入り。日本ハム在籍最終年の2年前を思い返し、直球を投げ続けてきた。「また傾斜に入って、強い球を投げたい」と変化球を交ぜた投げ込みで開幕ローテーション争いへの本格準備に入る。
24日のオーナー報告の際に小久保監督は上沢のキャンプA組を名言し「昨年、悔しい思いをしてる。アメリカで、うまくいかなかったことがホークスで活躍することで経験が生きたと言える。そういう年にしてほしい」と語った。開幕投手の有原、モイネロ、スチュワートがローテ当確。残りは競争となる。
開幕2カード目には敵地での日本ハム戦がある。ただ、上沢はここでも、冷静だ。「まずローテの競争に勝つことが先。そこ(日本ハム戦)は正直、見ていない。しっかり目の前の段階を踏んでいくことが大事」。新天地で淡々と長い回を投げ抜いて、イニングイーターとして復活する。今に集中している。(井上 満夫)
≪相談役に名乗り≫
H…長谷川が上沢の“相談役”に名乗りを上げた。この日、筑後ファーム施設での自主トレ中に日本ハムで2年間、一緒だった上沢と再会。「まずはトイレの場所を教えてあげましたね。上沢さんは、かなり優しいんです。僕も、何でも聞いてくださいって感じです」と申し出ていた。