◇大相撲初場所 14日目(2025年1月25日 両国国技館)
初優勝を目指す平幕・金峰山が霧島をすくい投げで破り、12勝2敗で単独トップを守った。3敗勢は綱獲りの大関・豊昇龍は尊富士を退け、平幕・王鵬も隆の勝に逆転勝ち。ともに1差をキープして千秋楽を迎える。優勝争いは3敗までの3人に絞られ、金峰山が王鵬を破ればカザフスタン初の優勝。敗れれば、巴戦の可能性もある決定戦となる。
まさかの展開に満員の館内がどよめきに包まれた。右四つ上手十分の霧島が外掛けから仕掛け、上手投げでたたみかけた。その瞬間だ。金峰山が渾身(こんしん)の力で右からすくい投げ。体が浮き上がった霧島は激しく土俵に叩きつけられた。1メートル95、180キロのカザフスタンの怪物は土俵で鬼の形相。八角理事長(元横綱・北勝海)も「金峰山は自分の力以上のものが出た。アドレナリンだ。優勝に向けて気持ちが高ぶっている」と絶賛した。
興奮収まらない表情で引き揚げてきた金峰山は支度部屋では人ごとのように応対する。「ちょっと焦ったけど、落ち着いて良かったと思う。思い切り投げようかなと」。テレビモニターで自身が単独首位にいることを確認しても表情を変えることなく冷静だった。
初日から白星を重ね、中日で単独首位に立ち、一度も並ばれることなく千秋楽を迎える。カザフスタン初の関取は1差の王鵬戦に勝てば初優勝となるが「(優勝は)考えていない。自分の相撲を取るだけ」と淡々。師匠の木瀬親方(元幕内・肥後ノ海)は優勝したら母国へ凱旋させることを明言し「力を出し切れる相撲、後悔するような相撲は取ってほしくない」とエールを送った。
しこ名は師匠の出身地、熊本の名山から取った。ミカンの産地でも有名だが、金峰山は意外にも「フルーツは取るけどミカンは食べないね」と衝撃の告白で周囲を笑わせる。元横綱・朝青龍に素質を見いだされて来日し10年、未完の大器いよいよ覚醒か。