今春選抜に出場する横浜(神奈川)の村田浩明監督(38)が26日、同じ神奈川から21世紀枠で甲子園初出場を果たした横浜清陵の練習場をサプライズ訪問した。
横浜を指揮する以前、県立校の霧が丘で部長、白山で監督を務めていた時から交流のある野原慎太郎監督(42)との絆は固い。選出の翌々日に異例の訪問が実現し、村田監督は横浜清陵ナインにエールを送った。
「横浜清陵さんと一緒に選抜に出られるということは本当にうれしい。私も(白山の監督として)県立校から甲子園に行くという高い志がありました。本当に目指していたんだけれど(強豪がそろう神奈川で)凄く高い壁があった。それでも頑張ろうと思えたのは、同じ夢を持つ野原先生がアツい思いを持っていたからです。私は母校に戻ることになり“県立から甲子園に行く”という夢をかなえられず横浜に行き、そしてその夢は野原先生が成し遂げました。甲子園は全国制覇する気持ちでいかないと飲み込まれる舞台です。一緒に神奈川の野球を盛り上げられたらうれしい。チーム横浜でお互いに頑張りましょう」
24日の出場校発表の際、横浜清陵の選出を知った横浜ナインは歓声を上げたという。村田監督は「選手の拍手が凄かった。現場にいた記者が“何が起こったの?”と思うくらいに一緒に喜ぶことができた」と振り返る。
昨秋の明治神宮大会では日本一に導き、優勝候補筆頭として選抜に挑む指揮官が突然の来訪。横浜清陵の山本康太主将(2年)は「非常に光栄です。自分たちにお話をしていただけたことで、甲子園に行く実感が湧いてきました」と目を輝かせた。
両指揮官が甲子園にそろう「チーム横浜」はこれが最後かもしれない。横浜、慶応、東海大相模など私学優勢の神奈川。公立校が出場するのは1997年の横浜商以来、県立校では1954年の湘南以来71年ぶりの快挙だ。
野原慎太郎監督は「突然来られてビックリしました。村田監督はああいうことをするんですよ(笑い)。実は僕も選抜に選ばれた日、ウチの練習が終わった後に横浜高校のグラウンドに行ったんです。でも遅かった。もう練習が終わっていて真っ暗で会えなかったんです。でもまさか来ていただけるとは」と笑みを浮かべた。
「“一緒に頑張ろう”と僕らからは言うのはおこがましい。横浜さんから、そういった言葉をもらえるのは凄くうれしいことです。僕らも仲間に入れてくれたんだってね」
かつては神奈川県立の若き指揮官として悩みを分かち、村田監督は「母校横浜の再建」、東海大相模出身の野原監督は「県立から甲子園」とそれぞれの夢を追った。この春、甲子園で2人のレールが再び交差する。(柳内 遼平)