逆襲へ、早くも本気モードだ。巨人に新加入した田中将大投手(36)が29日、2日目を迎えた宮崎合同自主トレで初めてブルペン投球を行った。捕手が座った状態で変化球も交えた16球など計46球。シーズンさながらの鋭い眼光での熱投に、若手投手陣も「恐怖」を口にした。昨季はプロ18年目で初めて白星なしに終わるなど、雪辱を期すシーズンへ。日米通算197勝の右腕が、強い思いを投球に込めた。
木の花ドームのブルペンが、スタジアムのマウンドと化した。鬼気迫る表情の田中将。ウオーミングアップなんてない。1球目から鋭い眼光で、本気モードで腕を振った。
立ち投げの16球目からブルペン捕手と交代して、相手を務めたのは山瀬。36歳の目力の強さに「怖かったです」と言い「オーラが凄かった」と圧倒された。座った状態からはスプリット、スライダー、ツーシームも交えた16球を受けたが、最も印象が強かったのは気迫。23歳の捕手が「シーズン始まったらどんな顔すんのかな」と言うほどだった。
投げ終えるとようやく笑顔を見せた田中将は「思ったよりしっかり投げられました」と充実感を口にした。この日は一番乗りでキャッチボールを始め、ブルペンに向かったのも一番最初。全てセットポジションでフォームを入念に確認しながらの投球を「そこ(バランス)が一番大事なんで、常にそこを意識して投げられた」と振り返った。
沖縄での自主トレも含めて今年5度目のブルペン入り。ハイペースかという問いには「特に多いっていう感じではない」としたが「でも、強度とか、そういうことに関してはここ数年よりはしっかりと投げられていると思います」と例年とは違う手応えを認めた。右肘手術明けで0勝に終わった昨季は、オフに愛着ある楽天を退団。新天地での雪辱を目指し、順調に、そして気持ちを込めた調整を証明する“巨人初ブルペン”だった。
日米通算200勝まであと3勝の右腕の投球。捕手の後方では若手投手がズラッと並んだ。捕手の山瀬がスプリットを「自信満々にギリギリワンバンしないところに2球投げたんで凄い」と驚嘆するなど、制球力で驚かせた。目を輝かせて見入った大勢も「コントロール凄いなって。構えたところに来てたんで凄いなと思って」とベテラン右腕の凄みを肌で感じ取った。
新天地でのプロ19年目。「緊張する」と何度も口にしてきた田中将だが、ブルペン以外では笑顔が増えてきた。「良かったと思います」と手応えの初ブルペン。座右の銘「気持ち」で進む復活の道を、順調に滑り出した。(村井 樹)
▽田中将のブルペン入り ヤンキースをFAになり、8年ぶりに楽天に復帰した21年は、キャンプ合流2日目の2月7日に初めてブルペン入り。全球種を交えて計40球を投じた。22年はキャンプインより前の1月30日にブルペン入りし直球のみ20球。23年は1月25日に直球のみ11球を投じている。右肘のクリーニング手術明けの24年は、キャンプイン前日の1月31日に立ち投げで26球。2月5日に初めて捕手を片膝立ちした状態で計31球を投じた。
≪生きた教材にクギ付け≫田中将のブルペン投球に熱視線を送った井上は「ファン目線。ずっと見ていた人がブルペンに入ってるのを、あんな間近で見られることはない」と感激した様子。泉も「威圧感を感じました。オーラというか。後ろから見ててもでかいというか」と目を輝かせていた。