お笑いタレントの鉄拳(52)がNHK大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」で披露した浮世絵が話題を集めている。作中では絵師として自ら筆で描くシーンが流された。視聴者からも「たたずまいが格好いい。絵も奇麗」「本当に描いているからこその目線や姿勢だった」と評判は上々。鉄拳は取材に「絵だけは完璧に描けるようにという気持ちでやった。描けなかったら呼ばれた意味がないと思っていました」と描くシーンに込めた思いを語った。
演じたのは江戸時代中期に活躍した絵師の礒田湖龍斎。女性の柱絵を得意とし、横浜流星(28)演じる主人公蔦屋重三郎らと吉原の“ファッションカタログ”にあたる「雛形若菜初模様」の絵を手がけた。素顔での出演も話題となった。
普段は白塗りメークがトレードマークで、自作の絵を描いたフリップ芸で笑いを取っている。2012年にはバラエティー番組の企画で誕生したパラパラ漫画「振り子」が世界的にヒット。温かみのある絵に定評があるが、浮世絵をはじめとした日本画に挑むのは今回が初めて。日本画特有の線の細さや筆先端の柔らかさに苦戦し「筆はふにゃふにゃして描きにくい。しかもそれで細い線を素早く迷わずに描かないといけない。言うことを聞かなくて大変だった」と振り返った。
パラパラ漫画の制作を一時やめ、一日4時間にも及ぶ猛特訓。太かった線も細くなり、難しい浮世絵特有の表情も描けるようになった。「目が本当に難しかった。ずっと練習して、やっと線が細くなった。それを初期のと見比べて、上達を感じた」と苦労を語った。
今作の出演を通し、パラパラ漫画だけでなく、浮世絵の引き出しも増えた。「浮世絵のパラパラ漫画を描いてみたいですけれども、1枚1時間くらいかかるので、多分無理ですね。公式ガイドブックの仕事とか来ればいいのですが」と笑った。浮世絵からさらなる鉄拳ワールドが広がっていきそうだ。(前田 拓磨)
◇鉄拳(てっけん)1972年(昭47)5月12日生まれ、長野県出身の52歳。劇団東俳などを経て、97年から鉄拳として活動を開始。13年に日本漫画家協会賞特別賞。ドラマにはほかに本名の倉科岳文名義でフジテレビ「海の上の診療所」に出演した。