パワーアップで左翼争い先制パンチだ。阪神・前川右京外野手(21)が沖縄先乗り自主トレ最終日の30日、沖縄・宜野座の「バイトするならエントリー宜野座スタジアム」での屋外フリー打撃で快音を連発。34スイングで柵越えは最大4連発を含む10本を誇った。体重は昨年11月の秋季キャンプから3キロも増量。自己最重量となる92キロの強靱(きょうじん)ボディーが完成した。あす2月1日からは春季キャンプがスタート。熾烈(しれつ)さが増す左翼争いへの準備は整った。
確かな進化を遂げた前川の姿が宜野座にあった。力感のないスイングから放たれる打球のほとんどがヒットゾーンに飛ぶ。加えて、目を引いたのが鍛錬の冬で身に付けたパワーだった。
「いい力感で(バットは)振れていた。そんなにガチンコで振らずに、8割くらい(の感覚)で振れていたので、多少(体の)使い方も良くなったのかなと思います」
24年から右翼スタンドに新設された防球ネット(通称アレ・ネット)に何度も突き刺した。アーチをかけたそのほとんどが右中間最深部への本塁打。柵越えは推定120メートル弾に加えて最大4連発を含む10発を放り込んでも、まだ「8割の力感」と言うから恐ろしい。
「(スタンドに)入るということは何かしら(体の状態や使い方が)良いということ」
実は低酸素トレーニングがパワーの源だった。昨年の12月中旬から1カ月以上も地元・三重県津市にある「みどりクリニック」に通った。酸素濃度を標高約2000メートルに設定。1時間の体幹トレーニングに始まり約1時間のウエートトレーニング、最後はフィットネスバイクをこぐメニューを週5回こなすことで、心肺機能の向上や通常時よりも効率の良い筋力アップに成功した。現在の体重は昨年11月の秋季キャンプを終えた時点から3キロ増の92キロに到達。自己最重量の強靱(きょうじん)ボディーが完成した効果が、打球に表れていた。
「(打撃の感覚は)思ったよりよかった。みどりクリニックでだいぶんトレーニングできたことが(飛距離に)つながってる」
キャンプインを2月1日に控えた沖縄先乗り自主トレ最終日。井上、野口らと争う左翼のポジション争奪戦で先制パンチを浴びせたと言っていい。「体のコンディションは去年より全然いい。(キャンプは)ケガなく飛ばしすぎず、一日、一日を頑張りたい」。高卒4年目の背番号58が、「2・1」からはさらに存在感を見せつける。 (石崎 祥平)
▽低酸素トレーニング 酸素濃度の薄い環境でトレーニングすることで心肺機能の向上や通常時よりも効率の良い強化を図る。他球団ではDeNA・山崎が3年前から、ヤクルト・清水が23年から導入。陸上男子100メートル日本記録保持者の山縣亮太は、21年10月に右膝手術後のリハビリ期間中に低酸素トレーニング施設を利用していた。