ロッテからポスティングシステムでメジャー挑戦する佐々木朗希投手の所属先がドジャースに決まった。「25歳ルール」の対象のため、マイナー契約からのスタート。契約金は650万ドル(約10億1400万円)とされ、「あと2年待てば…」の声があるのは確かだが、東日本大震災を経験し、“明日の保証”などないことを知っている佐々木らしい決断だと思う。5年間で1度も規定投球回に到達できなかったとはいえ、唯一無二とも言える稀有(けう)な才能は誰もが認めるところ。メジャーでも活躍してほしいと願っている。
ロッテへの譲渡金は約2億5000万円。高額な譲渡金を得るよりも、若者の夢を応援することを選択した企業姿勢は素晴らしいと思う。そもそも中南米の若手選手の“青田買い”による契約金高騰を防止するために生まれた「25歳ルール」をNPB選手に適用することがおかしいのであって、数年後にFAとなるであろう優秀な選手を前倒しで獲得したいのであれば、譲渡金は選手の契約金額と連動させず、FAになるまでの期間によって変動するような形にすべきだと思う。
以前、担当していたプロボクシング界には日本独自の「クラブ制度」というシステムがある。大相撲の部屋制度を参考にしたもので、選手の保護、育成に大きな役割を果たしている一方で、かつては選手のジム移籍を困難にしていた。
ジム会長の許可がなければ、選手は絶対に移籍できない「不平等条約」だったからだ。一部では法外な移籍金を要求されることもあったと聞く。元世界4階級制覇王者の井岡一翔が一時期、海外でしか試合をできなかったのも、この「クラブ制度」の弊害だった。
現在は改正され、最長でも3年間で契約は解除できる。もちろん、両者が合意すれば、延長も可能だ。入団時に高額な契約金を払い、野球に専念できる環境を提供しているプロ野球で3年でFAはあり得ないだろうが、FAまでの期間短縮は検討される時期に来ているのではないだろうか。
昨季10勝を挙げ、人気、知名度ともチームNo.1の佐々木が抜けることは戦力的にも営業的にも大きな痛手。それでも次のスター候補は現れるはず。2月1日から、いよいよ春季キャンプがスタート。次世代スターを発掘できることを楽しみにしている。(記者コラム・大内 辰祐)