俳優の緒形直人(57)が31日、NHK「あさイチ」(月~金曜前8・15)にゲストとして生出演。父・緒形拳さん(08年死去、享年71)との思い出を語った。
緒形は映画「優駿 ORACION」(88年公開)でデビューを果たし、この作品が父・拳さんと最初で最後の親子共演となった。作品でも実際に親子を演じた。
当時について「自分が最初にオーディション受けて何とかその役を勝ち取って、その時はまだ父親役が決まってなかったんですね」と自身の出演が先に決まったと回想。「それで、僕がほとんど映画、芝居するのも初めてだったので監督(杉田成道)からリハーサルってことで1カ月ぐらい、いろんなことを教えてもらって、その1カ月後ぐらいに父親役が親父になるぞって監督に言われて…」と1カ月間の演技特訓後に伝えられたという。
そして、家に帰ると、拳さんから「おう、最初だけ手伝ってやるよ」と言われたことも明かした。
ただ、実際に撮影が始まると「現場ではね、父と親子役でリハーサルをやった時にまぁ、あがっちゃって…。台詞が出てこないんです、真っ白になって」とド緊張したといい「何をどうやっていいか分からなくて、それぐらいの思い。最初は2度と共演したくないなって思いましたね」と父との共演はデビュー作ということもあって緊張の連続だったと苦笑いしながら振り返った。
撮影後、拳さんから直筆の手紙を貰ったことも明かし、スタジオにはその手紙を持参。「熱と暑土と砂と飢えと乾きと これらすべてのものに打ち勝ち犀(サイ)の角のようにただ獨り歩め」としたためられている。
緒形は「“俳優としては教えることは何もない。伝統芸能じゃないので、自分は自分の現場でいろんなことを吸収してこい”って、割と獅子を崖から落とすような感じで言われたんですけど、それじゃ、あまりに可哀想と思ったのかこれを後日いただきました」と経緯を語った。
また、作中では親子ゲンカで取っ組み合うシーンもあり、台本にはなかった演出といい「親子にしかできない親子のシーンで、割と映画関係者からウケが良かった」と目尻を下げ「あそこまでできるのは親子だからね。普通は思いっきりひっぱたけないですよね、他人の子なら」と笑った。
そして、拳さんが「亡くなる何年か前に“面白い映画があれば、もう一回やろうか。どうだ”って」と親子での再共演の話をしていたと明かし、少し寂しそうに遠くを見つめた。