阪神の新外国人のネルソン(フィリーズ傘下3A)が、早くも予測不能の魔球を解禁した。捕手として受け止めた坂本もびっくりの、大きく揺れ動くナックル。わずか2球の試投だったが、初ブルペンでのインパクトは絶大だった。
「やばいなと思いましたね。“こんなんだったらやばいな、結構危ないな”って想像してた感じのまま飛んできたので。やっぱり武器になると思う」
坂本の言葉がすさまじい衝撃を物語っていた。米国での投球の映像をチェックし、かねてよりナックルを受けてみたいという思いは強かった。そして、ネルソンとの夢タッグは春季キャンプ初日に実現。前夜、宿泊先の食事会場で外国人投手らとたわいもない会話を楽しんでいるとビーズリーからは、「ナックルの時はミットを2個つけた方が良い」とジョーク交じりの忠告を受けたという。
坂本は「多分、サッカーの無回転のシュートみたいな感じ。キーパーの正面に飛んでくるけど、どっちに曲がるか分からない」と表現した。いまだかつて受けたことない魔球。それでも、反射的に反応してミットに収めた。「他のキャッチャーが捕れなかったらちょっとうれしいですけどね。俺だけ捕った!みたいな」。照れくさそうに笑いながらも、女房役に早くも名乗りを上げた。
ネルソンは変化球を交えて23球。チェンジアップ、スライダーを投げて日本のマウンドの感覚を確かめた。「ブルペンもうまくいきましたし、凄く楽しかった」。右腕は充実のキャンプ初日を終え、満足そうに語った。
可能性無限大の魔球を使いこなせるか…坂本にとってもワクワクが止まらない。「使えたら、使いたい。僕から言えることは“頑張ります”っていう感じですね」。プロ10年目を迎えた背番号12のやりがいをかき立てる、新助っ人の鮮烈な初ブルペンだった。(山手 あかり)
◇ニック・ネルソン 1995年12月5日生まれ、米フロリダ州出身の29歳。16年ドラフト4巡目(全体128番目)でヤンキースと契約。20年8月1日のレッドソックス戦でメジャーデビュー。24年はフィリーズで4試合、傘下の3Aで34試合に登板。メジャー通算74試合で5勝4敗1セーブ、防御率5.20。1メートル85、92キロ。右投げ右打ち。