沖縄・宜野座での阪神キャンプで初めて投内連係が行われた。これまで投手だけでサブグラウンドで行っていたが、メイン球場で野手と呼吸を合わせるのは初めてだ。
投内連係は投手、捕手、内野手がいれば事足りる。では、この間、外野手は何をするか。もちろん走者役になる方法はあるが、キャンプ3日目でまだその段階にはない。
外野手は右翼芝生上でノックを受けていた。ただし、通常の外野ノックではなかった。
外野守備走塁チーフコーチ・筒井壮は左右にゴロを転がした。目にとまったのは、グラブと反対側に来た打球を近本光司や森下翔太ら全員がバックハンド(逆シングル)で処理していたことだ。通常、外野手は転がる打球に対しては回り込んで正面で捕球する。
「普通は回り込みますよね。外野手は打球まで距離がありますから」と筒井も認めた。「でもね。外野手にもバックハンドが必要な時があるんですよ。左中間、右中間、レフト線、ライト線でギリギリ追いついたとか、もしくは素早い送球が求められる時とかね。そんなプレーを練習から全くやらないのではなく、まずはやっておくことが必要だと思いますね」
確かにその通りだ。思いだしたのは昨年まで在籍していたシェルドン・ノイジーである。リーグ優勝、日本一となった一昨年、外野手最多補殺(12)を記録した。目立ったのは「二塁打コース」と呼ばれる三塁線突破、または左翼線への打球を素早く処理し、打者走者を二塁上で刺すプレーだった。内野手経験もあるノイジーはフェンス前であえてバックハンド捕球し、送球していた。捕球時に腰が入り、素早く送球できるからである。
内野手とは違い、外野手は後逸の恐れのない確実で安全な捕球を求められる。それが「正面で両手で捕れ」につながるのだが、この常識も疑いたい。バックハンドも不確実で危険な捕球方法とは限らない。逆シングルも捕って投げる動作を見れば「正面」に違いない。
「常識を疑え」と天才物理学者、アルバート・アインシュタインが語っている。「常識とは18歳までに身につけた偏見のコレクションでしかない」。つまり、学校から社会に出たら、「常識外」に取り組むのがプロなのだろう。 =敬称略= (編集委員)