シン・リチャードで突き抜けろ! ソフトバンクの王貞治球団会長(84)が3日、未完の大砲・リチャード内野手(25)の変化に気づき、覚醒に期待を込めた。山川穂高内野手(33)と覚悟の自主トレを過ごしたロマン砲はこの日、フリー打撃60スイングで20発。世界の王は「力任せじゃない」と確かな成長曲線を感じ取り、力強くエールを送った。
「さあ、ここから何人が出てくるかだな」。若手を中心としたメンバーのフリー打撃を控え、王会長が声を弾ませながらグラウンドに視線を向けた。
オフを経て引き締まった体のリチャードに近づくと「見てるからな!」と力強く声をかけた。「今年は山川から学び取ってやるぞ、と取り組んでいるしね。山川も“今のところいい感じできています”と言っていた。力任せではなくインパクトを意識してやるようになっているね」。振り回すことなく、考えたスイングで放つ60スイング中20発の柵越えを見届け目を細めた。
かねて目をかけてきた大砲候補だ。ウエスタン・リーグでは5年連続でホームラン王を獲得。きっかけをつかめさえすれば、一気に突き抜けられると見ている。特に今オフは「絶対に変わりたい」と山川に過酷なトレーニング覚悟で弟子入り志願。師匠が「とんでもない量をやっているので是非期待してもらえば」と話すほどの期間を過ごしてきた。しっかりと打撃も磨き上げ、たくましい姿となった。
王会長からしても大いに期待するところだ。「待ったなしでやってもらわないとね。いずれにしてもポジションの枠は限られている。周りのライバルも成長している。長打では他の選手より優れているんだから、そこでつかみ取ってほしい。本人も悔しい思いをしていると思う。あとは試合でどう結果を出すか、だからね」
リチャードは今キャンプも山川と行動をともにしている。早朝から球場入り。A組メニューを終えるとS組で独自調整を行う師匠のもとに合流し、日が暮れるまで球場に残って長時間にわたる練習を行っている。王会長から熱視線を送られながらの打撃練習について「全力でいきました。いいスイングができたと思います」と短い言葉で振り返った。とにかく黙々と野球に没頭している。
誰もが期待する背番号52。“練習の鬼”として知られる師匠が太鼓判をおす猛特訓を経ての覚醒を王会長も温かい目で見守っている。 (木下 大一)
≪笹川には「1世指令」だ≫
H…王会長は“ギータ2世”として注目を集めている笹川には「1世指令」を出した。柳田がかつて背負った44番をつけ、昨年の日本シリーズ第5戦では「1番・左翼」でスタメン出場し、柳田と1、2番を形成した22歳に「顔もみんな同じじゃない。最後は自分が(感覚を)つかめるか。笹川は笹川1世を目指さないとね」とニッコリ。レギュラー獲りを目指す若鷹への期待を口にした。