西武・高橋光成投手(28)が誕生日を迎えた3日に宮崎・南郷キャンプで初めてブルペン入りし、捕手を約1メートル手前に座らせて33球を投げた。ターゲットを近づけることで目線が上にぶれる悪癖を修正。昨季0勝の屈辱をバネに「17メートルブルペン」から“見下して”制球力アップを期した。
鍵は目線にある。今キャンプ初めてブルペンに入った高橋は捕手の柘植を約1メートル手前に座らせ、ホームベースの上にあるミットに向かって投げ込んだ。狙いはターゲットをより近くすることで、焦点のぶれをなくして見下ろすことだ。
「目線はめっちゃくちゃ大事。そこが決まればだいたい狙ったところにいく。投げ下ろす軌道を出したい」
約17メートルでの投球練習を発案して実践した。開幕から11連敗を喫し、0勝に終わった昨季の反省点は投球時に目線が上に向くことでボールが右打者の内角高めに抜けることだった。「真っすぐ見ているつもりだけど、1回目線が浮いてしまって、その分のロスができる」。結果として左肩も自然と上向き、制球が定まらなかった。
抜け球が増えた影響は数字にも表れ、直球の被打率は23年の・235に対して昨季は・325まで悪化。最速157キロから2キロ減、平均球速も1キロ減の149キロにとどまった。課題克服のため、12月の自主トレからは頭につけたレーザーポイントを的に合わせながらシャドーピッチングを繰り返し、目線が水平になる投球フォームづくりを徹底してきた。
距離を縮めた理由はもう一つある。試合に比べてブルペンでは10キロ程度球速が落ちるという。心理的な要因なのか。「原因は分からない」と悩み、考え方を変えた。「ブルペンで良くても実戦につながらない。もう正規の距離で投げる必要がないし、ブルペンで調整するという概念がなくなってきた」。今後はキャンプ期間だけでなくシーズン中のブルペン調整でも捕手を前に座らせて目線だけを確認していく考えだ。
28歳の誕生日を迎え、今季終了後のメジャー挑戦も懸かる一年に「勝負の年だし、野球人生の分岐点になる」と決意を込めた。打者を見下ろし、完全復活を果たす。(福井 亮太)