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濱田祐太郎(2)配信番組で知った時代の流れ「子どもは目が見えないとか関係なく受け入れてくれる」

スポニチアネックス 2025年2月4日 20時25分

 30歳を超えたころから、自身の仕事と、ハンデと、社会の関係性も冷静に見つめることができるようになった。盲目の芸人としての可能性も探りながら、前を向き続けている。

【濱田祐太郎インタビュー(2)】

◆◆健常者も障害者もイジる芸風「どっちからもアンチコメント来る」◆◆

 ―(笑い)R-1の時は世間に対してのメッセージみたいなのは込められていました?

 「それはないです。多分今も変わってなくて、だからこそ面白いネタもできるんだと思う。ただ、ハンデっていうものをお笑いとして消化するときに、いじられる側に無意識のうちに回されていることが多いですけど、俺の意識としては別にお笑い芸人やからいじられるの全然かまへんけど、それと同じくらい俺だってお前のこといじるからなっていう気持ちではずっといます。結果、笑いになりゃどっちでもいいんですけどね」

 ―健常者をがっつりイジるネタはお得意のように思えます。それを聞いて、こちらとしてはわがふり直せ、みたいなところもあるのですが(笑い)

 「でもね、これが悲しいもんで僕は別に健常者だけじゃなくて、障害者のこともいじるんで、両方からお前嫌い!みたいな感じになるんです。面倒な障害者も結局人間なんで、いっぱいいるから両方からアンチコメントみたいなのが来ますね」

 ―アンチコメントにはどう対処されているのでしょう?

 「最初はさすがに落ち込みますけどね。でも、別にこの人俺に関係ないしなっていう感じです。僕の中でのSNSの位置づけっていうのは感情のゴミ捨て場っていう考え方なんです。嫌な気持ちが高ぶったときにそれを吐き出す。良い方は良い方で、ハッピーなニュースとか、かわいい猫とか、感動的な出来事に対して、みんな素敵とか、私もこんなことあったみたいなコメントをするわけですよね。それはもうそのときの、自分も言いたいっていう感情が高まって投稿してるんで、ポジティブな投稿にしろ、ネガティブな投稿にしろ、そのときの感情を捨ててる場所なんだと思ってます」

 ―その対応はとても参考になります。ところで、芸人として思い描かれている将来像はありますか?今のところ、着実に芸人人生を歩いてこられているのでは、とは勝手ながら思っているのですが。

 「いやいやいや、新人のころの想定では、僕はもう明石家さんまさんを超えてると思ってましたよ(笑い)」

◆30超えて強まってきた福祉系の仕事への欲求◆◆

 ―それは失礼しました(笑い)。

 「まあ不遇っていう感じの芸人人生ではないかなと思います。R―1で優勝できたし、全国ネットドラマにも毎週出させてもらいましたし(日本テレビ系・恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~)。でも、最近ちょっとSNSのダイレクトメールで、中学生や高校生からYouTube見て面白かったですとか、TikTok面白いですとかメッセージが来るようになって、その子たちは目が見えない芸人とかに関係なく、当たり前に受け入れてくれているんです。それが新鮮で。僕がR-1で優勝した時は、新しいものを受け入れる態勢をみんなが整えようとしていた感じだったんですけど、子供たちは当たり前に芸人として活動しているのを見てくれているんです。だから、何か学校回ってネタやったりとか、僕みたいな芸人って他にいないんで体験してきたことをしゃべったりとか、そういう仕事もやりたい気持ちにはなってます」

 ―そういう思いになられたのは最近?

 「そうですね。30歳超えて、若手っていう歴でもなくなってきたなって思うようになったころからですね。20代の時はやっぱり自分がバラエティー出たいとか、テレビでもっと活躍したいとかが最優先っていうか、それだけでしたけど、今はもっと幅が広がって自分がやれることは何か、という気持ちにもなっています。目の見えない人をどうサポートするのがいいのかみたいな。子供たちに実際教室の中でもいいですし、校舎の中でもいいし、サポートしてもらいながら僕が歩くみたいなのとか。それも教育的ではなく、ぼくは芸人なので楽しくできそうな気がしています」=終わり

 【取材を終えて】毒っ気のあるステージの姿からは想像もできない朗らかな笑顔が印象的だ。また、こちらが少し言いにくくなるハンデに関する質問にも、察しよく先回りして応えてくれるスマートさにも感心した。

 R-1を優勝した時、私も含め多くの人が衝撃を受け、その“ブランニュー”な存在を理解しようとした。しかし、本人はそれもまったく想定内だったという。そんな濱田を驚かせたのがまさにSNS世代の中高生。彼らは目の見えない芸人に何も特別感を持たず、普通に接してくるという。

 多様性の時代とよく言われるが、多様性とはすでに前時代を生きてきた人たちが思うことで、もう子どもたちは多様性という言葉を使う必要性も感じていないほど当たり前の時代なのかもしれない。そんなことも考えさせてくれる有意義なインタビューだった。(江良 真)

 ◇濱田祐太郎のモウドクモウレツトークショー 2月7日、日本橋Pollux Theater 開演19時、前売2000円、当日2200円、配信1500円。問い合わせはFANYチケット0570-550-100。

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