◇きょう5日から王将戦第3局開幕
将棋のALSOK杯第74期王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)7番勝負はきょう5日、東京都立川市の「オーベルジュ ときと」で第3局が行われる。挑戦者の永瀬拓矢九段(32)は藤井聡太王将(22)に開幕連敗中。カド番回避に向け、重要な先手番を迎える。対局開始は午前9時、持ち時間は各8時間の長丁場だ。
午後4時前から始まった対局室検分で、永瀬は用意された飲料などを細かくチェックした。もはや恒例のルーティン。面積106平方メートルで温泉付きの豪華な自室には「案内がないと分かりませんね…」と、なんだかうれしそうだ。その胸元に結ばれたネクタイにはローマ帝国のグラディエーターが描かれている。シリーズ初勝利に向けた戦闘姿勢の発露なのだろう。
第3局は先手番。1手先行できるだけでなく、用意してきた戦型に導くことが可能で、現代将棋では優位性が際立っている。静岡県掛川市で1月12、13日に指された開幕局と同じスタートとなるが、永瀬は「意味合いが異なります」という。開幕局は振り駒で先後を決める。故に対局者は少なくても2つの進行に備えなければならない。第2~6局は事前に先後が決まっている状態。戦型選択を含め、先手が主導権を握りやすい。
「先後が決まっている先手番で、藤井さんとの2日制は今局が初めて。明日はその辺も頑張りたいなと思います」。開幕局は中盤でリードを奪う場面もありながら逆転を許した。同じ轍(てつ)はもう踏まないとの強い意志がコメントからも垣間見える。
ブドウ糖補給のため、下座横に5つ並ぶ「inゼリー」は今回、「Winゼリー」に表記を変更。受験生を激励する限定デザインを確認した永瀬は「あ、変わりましたね。すぐ気がつきました」と視線を送った。過去2局で食したのは各1個。「終盤で熱戦にならなかったからです。今局はたくさん消費したいですね。熱戦になればなるほど糖分が必要ですから」と激闘を期した。勝負の行方が煮つまってくる最終盤で、永瀬はWinゼリーにいくつ手を伸ばすのか。バロメーターとして見るのも興味深い。 (我満 晴朗)