米大リーグ、ドジャースの大谷翔平投手(30)の銀行口座から約1659万ドル(約25億3000万円)を盗み、違法スポーツ賭博の胴元に不正送金し、銀行詐欺罪などに問われた、大谷の元通訳水原一平被告(40)に対し、カリフォルニア州オレンジ郡サンタアナの連邦地裁は6日(日本時間7日)、禁錮4年9月の量刑を言い渡した。
同被告は濃紺のスーツ姿で出廷。報道陣の問いかけに反応することなく、連邦地裁へと入った。
スポニチ本紙・MLB担当の柳原直之記者は、連邦地裁で取材にあたり、自ら「法廷画」も描いた。
複数人の記者で出入り待ちと法廷内で手分けしていたメディアもある中、柳原記者は単独での取材だった。
「(言い渡しが終わった後に)追いかけて外で写真を撮れるかわからなかったんです。建物内や法廷内の録音、撮影は禁止なので、とにかくやれることをやろうと思って描きました」と明かした。
開廷は午後1時の予定だったが、水原被告は早めに来て待機している状態だったといい「(量刑言い渡しの前段階は)かなり難しい法律用語での長い説明が続いたので、とっさに取材ノートの白紙の部分を探して描きました」と振り返った。
法廷取材は2度目。「テレビではよく法廷画が使われているなと思って、見よう見まねで描きました」と語った。
裁判資料によると、水原被告は2021年11月ごろから昨年3月ごろにかけ、大谷の口座から約1659万ドルを盗み、違法賭博の胴元側に不正に送金した。野球カードの購入費や歯の治療費もこの口座から支払い、口座から得た金銭を課税所得として報告せず、虚偽の納税申告もした。
地元メディア「ドジャース・ネーション」は法廷内での水原被告のコメントも報道。「手紙にも書いたように、私は自分がしたことで大谷選手に心から申し訳ないと思っています。この過ちは私の人生をずっと左右するでしょう。そして私はその結果を受け入れる覚悟ができています。どうかお慈悲を」などと訴えたという。
また、大谷になりすまして銀行に電話をかけたことについて、水原被告の弁護士は「私たちはそれを否定しません」と答えたことも伝えた。
スポーツ専門サイト「ジ・アスレチック」の報道によると、水原被告が大谷の銀行口座から電話で送金手続きをする際、銀行側に「大谷翔平です」と述べ、送金理由は「車のローン」と回答したという。
同連邦地検は禁錮4年9カ月と釈放後3年間の保護観察処分、大谷への約1700万ドル(約26億円)の賠償などを求刑。水原被告は司法取引に応じて罪を認めたうえで、事件は長年にわたるギャンブル依存によるものとし、過去の判例でギャンブル依存症によって罪を軽減された判例があるとして減刑を訴えていた。
水原被告は通訳として大谷のサポートに当たっていた当時を振り返り「ひどい低賃金だと思った。自分や家族の人生を犠牲にしてきた」などと説明。1月23日には書面で、通訳として大谷宅近くに住む必要があったことで出費がかさみ「やりくりの助け」になると考えスポーツ賭博を始めたとして、情状酌量を求め、量刑は禁錮1年6月が妥当と主張していた。
連邦地検は、水原被告が長年ギャンブル依存の状態だったという、決定的な客観的証拠はないと結論付け、違法賭博で得た金を自身の銀行口座に入れていたことなどから犯罪の動機は金銭獲得に他ならないと判断。検察側は水原被告の預金口座には常に「かなりの残高」があったとし、23年3月には3万ドル(約458万円)以上、2024年3月には19万5000ドル(約2980万円)以上あったと指摘した。
水原被告側が提出した書面についても「多くが証拠に基づいていない」と反論。「反省するのではなく、盗んだことを正当化しようとしている」として水原被告の態度を強く批判していた。