将棋の藤井聡太王将(22)=7冠=が永瀬拓矢九段(32)に勝ち、3勝0敗としたALSOK杯第74期王将戦7番勝負(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)の第3局から一夜明けた7日、対局があった東京都立川市でスポニチ本紙恒例「勝者の記念撮影」に臨んだ。今回は対局の疲れも癒やしてもらおうとヘッドスパを初体験。15、16日、大阪府高槻市の山水館で指される第4局へ心身を整えた。
一石二鳥の撮影に笑みがこぼれた。7番勝負は第71期から出場し、15勝2敗。つまり藤井にとって15度目となった「勝者の記念撮影」でかつてなかった心地よさ。「こういう路線は初めて。やってもらうと、ほぐれてきた」。「路線」のチョイスに鉄道ファンの素顔ものぞいた。
持ち時間8時間の2日制対局から一夜明け。内容も熱戦で、中盤のねじり合いが長かった。永瀬優勢の局面もあった。終局した午後7時3分は自身の王将戦4番目の遅さ。だからだろう。普段昼寝はしないというが「意識が薄らいでました」。約15分の簡易バージョンだが、朝のひとときを満喫した。
頭皮をマッサージすることで血行を促進し、脳の疲労軽減を図る。「頭をフル回転させたのに、頭皮が軟らかい」。担当セラピストからのお墨付きに「ホッとしました」。疲れると肩が凝るのと同様、頭皮も硬くなるからだ。
終局後、立会人の青野照市九段(72)から「幻の妙手」が伝えられた。AIによる推奨手、永瀬の113手目▲6二銀不成で、遊び駒になっている銀をタダ捨てする王手だった。
永瀬は実際には、銀を入手するごく自然な▲4四桂を指したため、日本将棋連盟による棋譜中継の評価値は藤井の22%から68%まで急回復。控室の棋士はもちろん、両対局者も考えなかったそうで「実際、相当難しい」と藤井。それでも人間に考えられる手ではないと頭から切り捨てず、その思想を取り込んで血肉にしようとする。「もっと自王の安全度についてシビアな見方をすべき」と指し手を見つめ直した。
4連覇へストレートで王手をかけた。王将戦史上、大山康晴十五世名人、中原誠十六世名人、谷川浩司十七世名人、羽生善治九段に続く5人目の達成がかかる。「番勝負中に、防衛したらと考えることはしない」。十九世名人資格保持者の羽生を含め、永世名人ぞろいだが、目前の一局と向き合っていく。(筒崎 嘉一)