米カリフォルニア州サンタアナの連邦地裁は6日(日本時間7日)、ドジャース・大谷翔平投手(30)の銀行口座から約1659万ドル(約25億2000万円)を盗み賭博の胴元側に不正送金したとする銀行詐欺罪などに問われた元通訳水原一平被告(40)に、求刑通り禁錮4年9月と、大谷への1697万ドル(約25億8000万円)の賠償を命じた。判事宛ての“手紙”で求めた情状酌量は、虚偽説明が入り交じっていたとして一切認められなかった。
濃紺のスーツはシワだらけだった。後ろ襟にかかり耳が隠れるほどの長髪は、小刻みに揺れた。水原被告はジョン・W・ホルコム判事を見据え、量刑言い渡しに先立って低い声で「大谷には本当に申し訳ないことをしたと伝えたい」と英語で謝罪の言葉を述べたが、用意した紙を読み上げただけだった。
審理は約1時間40分に及んだ。禁錮4年9月、釈放後3年間の保護観察処分。大谷へ1697万ドル(約25億8000万円)、内国歳入庁(IRS)に115万ドル(約1億7500万円)の賠償金支払いを命じられた。以前よりややふっくらした水原被告は、緊張からか唇をなめたりする場面もあった。
水原被告は1月23日に情状酌量を求め連邦地裁に申立書となる“手紙”を提出。だが、ホルコム判事は「虚偽の表現や省略、重要な事実の省略に満ちている。水原氏の手紙には何の信用も置いていない」と厳しく指摘した。大谷の通訳時代は24時間体制の重労働や低賃金だったとの主張は、被告の夫妻に日本との往復ファーストクラスチケット、高級車ポルシェが大谷から贈られていたことなどが示されて認められず。長年のギャンブル依存についても、30カ所超のカジノ記録をもとに事実ではないと退けた。
違法賭博の負債返済のために大谷の口座から金を盗んだ一方で、勝ち金は自身の口座に入れていたことも判明。24年3月時点で預金口座には19万5000ドル(約2960万円)以上あったと指摘し「反省するのではなく、盗んだことを正当化しようとしている」と強く批判し、禁錮1年6月を求めた被告側の主張を突っぱねた。
また、米メディアは大谷が非公開で「被害者意見陳述書」を提出していたと報道。長年のパートナーによる裏切り行為に、少しでも“擁護”があれば量刑は減った可能性がある。だが情状酌量なしは、強い処罰感情があったとしか考えられず、大谷の心情を察したのかホルコム判事は「1700万ドルという窃盗額はあまりにも甚大だ」と述べた。
永住権を剥奪され、禁錮終了後は日本に強制送還となる可能性がある水原被告。閉廷後、弁護士とともに建物を出た被告は「控訴しないんですか?」などという質問に、無言のまま車に乗り込んだ。取材に応じた検察官は大谷が「金を盗まれ、利用され、食い物にされた」と断罪。水原被告を「恥知らずだ」と強く非難したように、最後まで誠実な姿は見られなかった。(サンタアナ・柳原 直之)