岡田彰布はずばり「怖いな」「締めなあかん」と言った。阪神オーナー付顧問として4日間の沖縄キャンプ視察を終えての感想である。
ポイントを「連係やろな」と言った。「あんまり良くないよな、連係。シートノック見たら分かるやんか。あまりにもスローイングが悪いやろ」
外野手―内野手の連係、中継プレーを指している。二、三、本塁への外野手の直接送球が乱れるシーンが散見された。
自身が監督だった昨年まで2年間、シートノックでは「全球カット」を徹底させていた。短い距離でも中継手(内野手)がカットしていた。低く強い送球で打者走者など他の走者に余計な進塁を許さない姿勢である。
だが、昨秋のキャンプから外野手の直接送球が一部解禁となった。監督・岡田時代から外野守備を担当するコーチ・筒井壮が新監督・藤川球児と相談して決めた。1人で投げられる距離は投げるという方針である。
どう変わったか。8日の紅白戦前のシートノックで数えてみた。具志川組中心の紅組はカット20に直接送球8。宜野座組中心の白組はカット14に直接送球6。計カット34に直接送球14。昨年100%だったカット比率は今年71%まで下がった。
問題は直接送球時の乱れである。「怖いなあ。ワンバウンド(送球)でどんだけイレギュラーしてる? 甲子園は土のグラウンドなんやから」
直接送球のため、今キャンプではキャッチボールの最後に「ワンバンスロー」を採り入れ連日練習している。それでも不規則バウンドはある。
「短い距離で今1人で投げてるやんか。短い距離はランナーが走らないんよ。アウトなりにいけへんからな。短い距離を1人で放る必要はない。それが野球や。連係や」
新たな「岡田の法則」が聞こえた気がする。「基本動作の繰り返しよ。去年あんだけエラーしてるわけやからな」
岡田は今の思いを藤川とは共有していないと言った。猛虎愛にあふれ、忖度(そんたく)のない苦言をどう聞くか。
この日、天気雨が降った。朝、宜野座村野球場に着くと虹が見られた。夕方、宿舎のある恩納村に帰ると、また虹がかかっていた。「ノー・レイン、ノー・レインボー」とハワイのことわざにある。「虹を見たければ、雨をがまんしなくては」
「雨のち虹」にする作業はこれからである。
=敬称略= (編集委員)