◇カーリング日本選手権最終日女子決勝 フォルティウス8―7北海道銀行(2025年2月9日 神奈川・横浜BUNTAI)
決勝が行われ、女子はフォルティウスがエキストラエンド(延長)の末に北海道銀行を8―7で破って優勝した。26年ミラノ・コルティナ五輪の国別出場枠を争う3月の世界選手権(ソウル)と9月に北海道稚内市で開催予定の五輪代表候補決定戦への進出を決めた。23年12月に第1子となる長男を出産し、復帰したスキップ吉村紗也香(33)にとっては、10年バンクーバー大会から数えて5度目の挑戦で悲願の五輪切符を目指す。
最後は石の上にも三年、いや、16年分の思いがこもったドローがハウスの7時の位置に止まった。吉村はすぐさま北海道銀行の選手と握手を交わす。とりわけ敗戦の責任で悔し涙を流していた元同僚で相手フォース田畑を慰めるように抱き留めた。その後、5人全員が集合すると、せきを切ったように歓喜の涙が頬を伝った。
「最後は自分の感覚を信じて投げた。出産して、チームや周りの理解がないとできなかったと思う。(息子は)まだ分からないと思うが、帰ったらメダルをかけてあげたい」
21年9月、「北海道銀行フォルティウス」としてロコ・ソラーレとの一騎打ちだった五輪代表候補決定戦に臨み、2戦先勝後に3連敗。五輪を逃すと、同年11月には新たに部を立ち上げることになる北海道銀行とのスポンサー契約が打ち切られ、フォルティウスは岐路に立たされた。選手は約7カ月間、貯金を取り崩して生活し「金銭面は最近でも詰めている。(一昨年、昨年の)カナダ遠征ではクラウドファンディングをした」。活動費は苦しいが、競技への思いはより強くなった。
2次リーグでも6―5と接戦を繰り広げていた因縁浅からぬ相手との決勝でも、強い思いが石に乗り移った。1点を追う第6エンド(E)は吉村が最終投でヒットロールに成功し、3得点で逆転。同点の第9Eでも最終投をハウスのほぼ中央に止めて2点を勝ち越し。延長にもつれ込んでも自信は揺るがず、「やはりメンタル面が一番大きい。どんな時も冷静でいられる」と逆境を乗り越えた強さを大一番で発揮した。
(「まだ通過点」/) まずは3月の世界選手権で日本の五輪出場枠を獲得し、9月には代表候補決定戦が待ち受ける。「まだ通過点の一つ。今より強くなったフォルティウスをお見せできるように頑張ります」と吉村。チーム名の意味は「より強く」。5度目の正直をかなえるため、まだまだ進化を止めない。