「大勢の人からお返しに何を得るんだと聞かれたが、私は何も求めていない。勝ちたいだけだし、ロウキにうちのチームにいてほしい。彼がチームに何をもたらしてくれるのかが楽しみ。快適に楽しく過ごしてくれればそれだけでハッピーだよ」
このように熱いコメントがミゲル・ロハスらしさだ。2月1日、ドジャースタジアムで行われたファン感謝イベントでのこと。今オフ、新加入した佐々木朗希に背番号11を譲り、自身はメジャーデビュー時に背負っていた72番をつけることになった経緯を問われた際の言葉だった。
「彼がマウンドで最高の先発をしてくれるか、私のいいチームメートになってくれるならそれがうれしい。互いにいい関係を構築できて、クラブハウスやフィールド外で気分良くいられるように助けられたらいいと思う。彼はルーキーだが、LAを楽しんでほしい。背番号がその助けになってほしいんだ」
大谷翔平、山本由伸の同僚になったことで、ドジャースの多くの選手たちが日本のファンにもおなじみになった。その中にロハスも含まれるのだろう。11年のキャリアで通算打率.260、50本塁打の内野手は、地味な仕事人タイプだが、今回のような熱血エピソードは数多い。
ベネズエラ出身の35歳、通称ミギー・ローは漢気にあふれたタイプ。1年前、チームに加わったばかりの大谷、山本に「ファミリーへようこそ」というメッセージつきのワインをプレゼントして話題になった。シーズン中は遊撃手転向を目指したベッツに丁寧なアドバイスを送ったり、プレーオフ開始前には対戦相手が決まるゲームをチームメートと一緒に見る観戦パーティーを主催したり。さまざまな形でチームを鼓舞してきた。
誰が相手でもその親切な姿勢は変わらない。昨年4月25日、ワシントンDCでのナショナルズ戦後。ピッチクロック違反を犯した山本にベンチで何か助言していたシーンについて、試合後に聞きにいった。するとシャワーあがりの着替えの手を止め、「二塁を見過ぎると時間を消費するから、走者を警戒した私が“外せ”と叫んだらプレートから足を外せと伝えたんだ」と数分間も1対1で熱心に経緯を説明してくれたことがあった。
いわゆる「ロールプレーヤー」がチームリーダーになるのは常に簡単なわけでではなく、その熱血ぶりが空回りしてしまうこともあるだろう。ただ、ロハスからはウソ臭さや表裏のようなものは全く感じられず、本物のナイスガイ。チームのためという姿勢も徹底しているだけに、他のベテランたちからも認められているのではないか。
「これまでも言ってきたことだが、違う国から来た選手たちにはクラブハウスで心地よく気分よく過ごしてもらいたい。番号がロウキを快適に感じさせるなら、私は譲るよ。これまでも言ってきたことをやっているだけだ」
英語が母国語ではない自身もいろいろな経験をしてきたためか、外国籍の選手、日本選手への気遣いを感じさせる言葉は数多い。佐々木にとっても頼もしい先輩になることだろう。今季を通じ、ミギー・ローがさらにどんな漢気エピソード、コメントを生み出してくれるかが楽しみでもある。(記者コラム・杉浦 大介通信員)