DeNA沖縄・宜野湾A班(1軍)キャンプ、第2クール2日目の7日。練習後の夕方は暴風が吹き荒れ天候は最悪に。だが体調管理優先で早めに宿舎に引きあげる選手が多い中、6年目の東妻純平は室内練習場で黙々と打撃練習を続けた。
それも150キロ設定の打撃マシン。今キャンプからチームが本格的にキャンプ地に持ち込んだ「シュート回転の直球」など、より実戦に近い投球を再現できる高性能マシンと向き合い1時間。ミスショットをすれば「ああ、ちくしょーっ」、快打には「よおしっ」と声をあげた。
選手がキャンプのこの時期に、この球速設定のマシンを打つことは少ない。経験豊富な村田修一野手コーチも「自分は現役時代“開幕合わせ”だったし、腰を痛めたりすることもあるから、この時期に速い球を打つことはなかった。目慣らしで見ることはありましたけど」と説明した。
だが、プロ通算3試合1安打の東妻に「開幕合わせ」の余裕はない。はっきりと言った。「僕は“紅白戦合わせ”ですから」。
翌8日には、チーム初実戦となる紅白戦が組まれていた。ここで「大暴れ」することが必要不可欠なファクター。7日に150キロを打ち、体を仕上げることは「予定通り」の取り組みだった。
そして、紅組の「7番・左翼」で出場した紅白戦。背番号57は3打数2安打1打点と気をはいた。紅白戦を振り返る。「やはり速い球を打っておいてよかった。特に(2安打目の)松本凌から打った打球はよかった」。
もちろん、まだスタート地点にも立ってはいない。果たして自分は捕手なのか、外野手なのか…。自主トレでは甲斐(前ソフトバンク、現巨人)の門下生になり捕手技術も磨いたが、今キャンプは投内連系にも参加せず外野手を続ける。
「とにかく打ってアピールしないと」。三浦監督は「このキャンプで“俺は大丈夫”と思っている選手は誰もいないと思う」と言った。そのナインの中でも最も「大丈夫」ではない立場の東妻。
全身全霊でバットを振り続ける崖っ縁の男に目を向け続けることは記者の責務と感じている。
(大木 穂高)