レギュラーツアーの元賞金王、飯合肇(70)が膵臓(すいぞう)の腫瘍摘出手術から復帰し、今季シニアツアーに参戦することを9日、明かした。
体調が急変したのは一昨年12月だった。ラウンドした翌日に急に具合が悪くなり、かかりつけの病院で診察を受けた。
「脈を測ろうとしたら脈がみつからないんだよ。エッと思って血圧を測ったら50しかない。ちょっと吐いたりしたらショック死するって(先生に)言われて、近くの大学病院に搬送された。CT検査を受けたら膵臓に腫瘍があると言われた。それで“ああ俺(の人生)は膵臓がんで終わっちゃったな”と思った」と振り返る。
その翌日に病院で一部の摘出手術を受けたという。だが術後に膵臓の断端から膵液が漏れ、それが周囲の組織を腐らせ膿(うみ)の原因となり胃を圧迫。一時は食事もできなくなって体重が30キロ以上も落ちたと明かす。
病状は回復せず、藁(わら)にもすがる思いで師匠のジャンボ尾崎の長男・智春氏に紹介してもらった医師のセカンドオピニオンを聞いて転院。「そこに凄い女性の医師がいて、1カ月半くらいかけて内視鏡でその膿を全部取ってくれた」。病院で腫瘍を調べてもらうと検査で陰性と分かり「それでみるみる良くなって退院できた」
ただ、すぐには口から食事を取ることができず、しばらく鼻から管を通して栄養剤を取り込んだ。
「7月まで管を抜けなかった。本当に痩せこけていたから、退院して会った人はみんな驚いていた」
そんなつらい闘病期間中に、心の支えになっていた人がいた。師匠のジャンボだ。
「痛い治療をしている時は、このまま死んだら楽だろうなと思うこともあった。母ちゃん(夫人)には怒られたけど。ただ、ジャンボにも(会って)お別れを言えてなかったから、ちゃんと治してジャンボのところに来るんだという気持ちは強かった」。師匠に会って回復を報告することを心に誓い、自分を奮い立たせた。
久しぶりにジャンボと会ったときには、やせこけた顔を見た師匠から「何だその顔は!!」と驚かれたという。それほど別人のように体重が落ちてしまっていた。
昨年は体調回復を優先し、主戦場とするシニアツアーには参戦できなかった。だが現在は少しずつ練習を再開し、意欲も戻り始めた。
「やっぱりゴルフ場に行くと気分が良い。どれだけやれるか分からないけど」と今季は体調と相談しながらシニアツアーにも出場する意向だ。以前のような、はつらつとしたプレーはまだ難しいかもしれないが、人を楽しませることが得意な“コング飯合”の復活は、シニアツアーに明るい話題を提供しそうだ。