「ベースボールアメリカ誌」がNCAA(全米大学体育協会)の大学野球のレベルが上がり、近年の大学野球出身選手のメジャー昇格スピードは、かつてないほど加速していると報じている。
2023年と24年のMLBシーズンでは、ドラフトからわずか2年以内にメジャーデビューを果たした元ディビジョン1(NCAA1部)の選手が50人に達した。24年のナ・リーグ新人王パイレーツのポール・スキーンズや、25年のナ・リーグ新人王争いで、佐々木朗希の最大のライバルになると目されるナショナルズのディラン・クルーズなどだ。ちなみに17年~22年の6年間を合計しても、ドラフト2年以内にMLBデビューしたD-1選手はわずか51人だった。多くのカレッジコーチが「大学野球の育成力向上が、この流れを加速させている」と指摘。「プロへの近道」になっているのである。
ミシシッピ州立大学のクリス・レモニス監督は「多くのMLBのGMが、今や大学野球はプロ野球と同じくらいのレベルでやっていると言うだろうね。うちに来れば、2Aレベルの球場、最新のウエイトルームを使えるし、充実したスタッフ陣に加え、メンタルヘルスのサポートまで受けられる」と自賛する。加えて集まってくる選手のレベルも高い。「単純に言って、今の大学野球にはこれまで以上にメジャーで即戦力の選手が多い」とは23年のカレッジ・ワールドシリーズ(CWS)を制したLSUのジェイ・ジョンソン監督。「23年のシリーズを振り返れば明らかだ。うちのチームにはスキーンズやクルーズがいた。対戦相手には、すでにメジャー昇格を果たしたレット・ラウダー(現在レッズ)がいたし、ハーストン・ウォルドレプ(ブレーブス)やワイアット・ラングフォード(レンジャーズ)もいた。グラウンドには必ずMLBに行く選手が7人くらいはいた」と振り返る。
一つの理由はNIL(ネーム・イメージ・ライクネス=肖像権収入)や収益分配の制度が充実することで、有望な高校生たちがプロ入りを急がず、大学野球を選ぶ流れが出始めているから。今までのように無償ではなく、大学でプレーすることで多少の経済的恩恵を受けられる。
もう一つの大きな要因は、最近のMLB球団の育成方針の変化だ。プロスペクト(有望株)たちの昇格スピードが上がり、マイナーリーグを短期間で駆け上がる傾向が強まっている。その結果、ドラフトでプロ入りするタイミングを遅らせても、結果的により早くメジャー昇格できる可能性が高まっている。
「私はプロ野球の大ファンだし、選手たち全員にプロでプレーしてほしいと願っている」とはクレムソン大学のエリック・バキッチ監督。「確実に言えるのは、大学野球は今や最高のファームシステムになっているということ。施設や待遇、指導体制は充実しているし、何よりも、次のドラフトで最大限のチャンスを得る準備ができる」と言う。
大学野球への一般的な関心も高まり、NCAAトーナメントやカレッジ・ワールドシリーズでは視聴者数が過去最高を記録した。今季はMLBドラフトの大物有望株たちに加え、日本のスター佐々木麟太郎も加わった。2025年も大学野球の躍進が続く。