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狂言と落語を花の銀座で満喫!

スポニチアネックス 2025年2月11日 16時19分

 【佐藤雅昭の芸能楽書き帳】落語家の春風亭小朝(69)が提唱して実現した「銀座で古典芸能を楽しむ会」が7日、東京・銀座の「二十五世観世左近記念 観世能楽堂」で開催された。頭に「小朝とナンチャンの」と記された通り、初回は小朝の落語とお笑いタレント南原清隆(59)の狂言で観客を魅了した。

 南原は日本テレビ系「ウッチャンナンチャンのウリナリ!!」内の企画で2002年に狂言を体験してはまり、06年からは「狂言とコントの融合」をコンセプトに掲げ、野村万蔵(59)の力を借りて「現代狂言」シリーズを上演するなど、今やライフワークとして取り組む本格派だ。

 会はまず二代目林家木久蔵(49)が開口一番を務めて開幕。昨年3月に日本テレビの長寿番組「笑点!」を卒業した父・林家木久扇(87)の近況をマクラに振って笑いを誘い、「権助提灯」に入った。風が強くて火の元が心配される夜、大店の旦那が本宅と愛人宅を行ったり来たりする噺で、木久蔵が軽妙に演じて小朝につないだ。

 その小朝が披露したのは「徂徠豆腐」で、江戸時代の儒学者・荻生徂徠と豆腐屋七兵衛のハートウォーミングな一席。元禄赤穂事件の際、浪士たちの処分をめぐって斬首ではなく切腹論を展開したことでも知られる徂徠。若き日の貧乏時代におからをめぐんでくれた七兵衛に恩返しをする噺だ。かつて立川志の輔(70)でも聞いたことがあるが、聞き比べが楽しい。

 20分の休憩を挟んでナンチャンの出番。古典狂言「魚説法」を演じた。親の追善のためにお堂を建立した檀家(施主)が、その供養と追善の説法を頼みに来るが、あいにく住職は留守。代わりに新発意(しんぼち)と言われる、お経をまだ習っていない新米の僧が応対し、お布施欲しさに一計を案じる。お経に魚介の名前を盛り込んで堂々と唱えるところが見どころだ。

 客席には親御さんに連れられた小さな子供の姿もちらほら。まさにうってつけの楽しい演目だった。新発意をナンチャンが演じ、施主を野村万蔵。長男の野村万之丞(28)が黒衣を務めていた。

 ナンチャンは1月17日に行った発表会見で「狂言は3世代にわたって楽しんでいただけるのが魅力。朗らかにやりたい」とアピールしていたが、その通りの楽しい舞台。佇まいもきれいだった。

 その後、トリの小朝がかけたのが「愛宕山」だ。太鼓もちの一八が、旦那のおともで山登り。旦那は山の中腹で名物の「かわらけ投げ」を始めるが、放り投げたのは何と小判。おまけに「小判は拾った人のモノ」と言うから、一八は命懸けで飛び降りるが…。

 山行きの歌あり、派手なアクションあり。小朝の熱演に、見ているこちらまで手に汗を握った。上方では三代目桂米朝や二代目桂枝雀、東京では八代目桂文楽や三代目古今亭志ん朝の名演が有名で、オチも知られた演目だが、普段の高座と違った独特の空気感もあいまってグイグイ引きずり込まれた。そういえば、かつて木久蔵の映像付き「愛宕山」を見た記憶がある。ユニークで軽~いタッチだったが、やっぱり聞き比べは楽しい。

 さて、始動した「銀座で古典芸能を楽しむ会」だが、第2弾、第3弾が待たれる。果たして次はどんな芸能が小朝の頭にあるか。想像するのも楽しみだ。

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