阪神・及川に「J」のメスが入った。ブルペン投球練習中、まずは藤川監督が左腕の後ろに立ち、助言をしていた。そこに宜野座キャンプ訪問中のジェフ・ウィリアムス駐米スカウトが歩み寄り、指導が始まった。及川が、その一端を明かした。
「スライダーを教わって、感覚は良くなりました。投げ方です。投球フォームで並進運動(体重移動)の時、右肩が上がってしまうので、(左腕の)トップが上がりきらず、抜け球が多かったのを指摘されました」
05年のリーグ優勝に大貢献したウィリアムス氏は、まさにレジェンドと言える存在。左横手からの大きく鋭いスライダーを武器とした左腕から、その伝家の宝刀の投げ方を教わった。肝は腕のトップを上げきること。その実践が、制球、曲がり幅の安定につながる。飛躍に直結する改良スライダーだ。及川がこうべを垂れる。
「自分も真っすぐとスライダーが軸となるスタイル。曲がり幅も大きく欲しいですし、よりバッターの手前近くでの曲がりも意識していて、その曲がり方も横じゃなくてスラーブみたいなのが僕の中ではベスト。そのスライダーが代名詞でもある方に気にかけてもらい、うれしいですし、つかんでいきたい」
かつて、ウィリアムス、藤川球児、久保田智之による必勝継投は3選手の頭文字を取って「JFK」と称された。この日の「J」の指導を演出したのは、「F」だった。
「(ウィリアムス氏は)思うところがあっても、私同様、現場介入はしなかった。でも選手が良くなるために必要なこと。凄くいい機会だったんじゃないか」と指揮官。ウィリアムス氏も「昨年の映像を見て気になって、藤川監督ともここ数日いろいろ話をしていた。情報共有しながら話ができていい時間だったよ」とうなずいた。伝説コンビの絆によって、及川がアルファベットの「J」ばりに曲がる改良スライダー習得に大きく前進した。