一人の育成選手がソフトバンク・王貞治会長の目にとまった。
「あの124番は誰だい? 腕の使い方がいいね。面白い。うまくいけば(背番号)2桁になるだろうね」
視線の先でフリー打撃をしていたのは育成5年目の桑原だった。7日にB組(2軍)からA組(1軍)に昇格。鹿児島・神村学園から入団当初は投打の二刀流を目指していたが、昨季、内野手登録になり、今季は出場機会を増やすため、外野を守る。打撃向上のために2年連続で今宮の自主トレに入門した成果が、世界の王をうならせた。
「腕の使い方」は苦手だった。上体の力が強く、腕だけのスイングになりがちだった。「今宮さんにアドバイスをいただき、もっと下(下半身)を使えと言われました。上体は使わないことを意識したら、自然な形で力が抜けた」。逆方向へ強い打球を打つなど今宮の打撃スタイルに近づけ、道が開けた。
この日、行われたA組のライブBPでは2打数無安打と結果は出なかった。ただ、日が傾いた午後5時過ぎまで室内練習場で打ち込む姿があった。王会長がキャンプ前半戦の視察最終日に見つけた原石は「(A組昇格は)急きょでしたが、いい感じできています」と自分を磨き続ける。 (福浦 健太郎)