◇プロボクシング バンタム級10回戦 WBOアジア・パシフィック同級王者 那須川天心＜10回戦＞WBC同級5位 ジェーソン・モロニー（2025年2月24日 東京・有明アリーナ）
キックボクシングの“神童”でWBOアジア・パシフィック（AP）バンタム級王者の那須川天心（26＝帝拳）が12日、都内の所属ジムで元WBO世界同級王者ジェーソン・モロニー（34＝オーストラリア）との同級10回戦に向け練習を公開した。
“世界仕様”の右で元世界王者を封じる。那須川はこの日、WBCバンタム級シルバー王者アレハンドロ・ジャイル・ゴンサレス（25＝メキシコ、18勝10KO6敗3分け）と3ラウンドのスパーリングを公開。WBC世界同級7位の相手に1回はほとんど右だけで組み立てると、鋭いカウンターの右で翻弄（ほんろう）。2回は右ジャブから左フック、アッパーとつなげ、3回にはロープ際で打ち合うなど多彩な攻めで世界ランカーを圧倒。モロニー戦の勝利の鍵を「前の手」だと明かした那須川は「ジャブだが一個一個にパワーが乗っていて、石を投げているようなイメージ。止めるだけでなくダメージも与えられる、力強い動き」と新たな武器に自信を示した。
スパーリング後はミット打ちや、ボディープロテクターを身につけた、元日本ミドル級1位カルロス・リナレス・トレーナー相手にボディー打ちを行うなど、12ラウンドのガチ練習を公開。「普通の追い込みをやってしまった。記者の方々は飽きている方もいたが、僕はリアルを見せることがテーマ。本気でやっている誠意を見せられたと思う」と大粒の汗を拭った。
昨年10月、初のタイトル挑戦でジェルウィン・アシロ（フィリピン）に判定勝ちし、初のタイトルを獲得。一方で攻めきれなかったことを課題とし「今回は自分からプレッシャーをかける。全てを兼ね備えられるようにやってきた」と“攻め”に着手。この日は、明らかに攻撃的となった「シン・天心」を披露し「手応えはもちろんあるし、自分の動きが確立してきた。徐々に形になってきたので、後はどう攻めて自分の動きをしていくか」と見据えた。
モロニーは20年には井上尚弥（大橋）、昨年5月の東京ドームで武居由樹（大橋）とも対戦した名王者。那須川は「ファンにとっては知っている選手同士のカード。注目度はいつもよりある」と自覚しながら「中間距離での戦いになる。そこをどう崩していくかか、相当頭を使う試合になる。僕もIQは高いですから、負ける気はない」とにやりと笑った。
今秋の世界挑戦を見据えており、世界挑戦に向けた“準備の試合”となることを明言。「そこまで言われる位置に来たと思う。この一戦で全てを失うことにもなるし、全部持っていけることにもなる。勝つことで日本のボクシング界がさらに盛り上がる。自分のためだけではなく、もっとボクシング界を盛り上げたい」と元世界王者との前哨戦を制し、ボクシング界を引っ張る覚悟を口にした。