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[INTERVIEW] 映画「容疑者」で帰ってきたコン・ユ、「残酷だった9ヶ月、軍隊に戻っているような時間でした」

THE FACT JAPAN 2014年1月16日 0時0分


[スポーツソウルドットコム|キム・ガヨン記者]「残酷だった9ヶ月、ダイエットなんかもうしたくないです(笑)」俳優コン・ユ(34)は、映画「容疑者」のオファーを一度断ったことがある。しかし、昨年KBS2TVドラマ「ビッグ~愛は奇跡〈ミラクル〉~」を撮影する時、もう一度オファーを受けた。彼は「いったいどんな映画なのか?どんな監督が僕と一緒に撮ろうとしているのか?」という好奇心で、ウォン・シンヨン監督に会った。もし作品に出演しないことになっても、ちゃんと会ってから断ることが、礼儀だと思ったからだ。そして、初めて会ったウォン監督は、コン・ユを完全に口説いた。コン・ユは、映画に関するウォン監督の話を詳しく聞いては、納得の表情を浮かべながら、本格アクション映画「容疑者」への出演を決めた。コン・ユの厳しかった9ヶ月間の旅は、こうして始まった。
家族を失い、韓国に浸透してきた北朝鮮の最精鋭要員 チ・ドンチョル役を演じることとなったコン・ユは、まず飢えた獣のようなイメージを表現するために、ぜい肉のない完ぺきな体作りに臨んだ。鶏の胸肉と卵だけを食べながら、まる3ヶ月間を専属トレーナーと一緒にトレーニングに専念した。映画は、そんなコン・ユの外見が重要なだけに、心理描写も重要だった。それを知っているコン・ユも、外的な部分より内的な心理をうまく表現することに努力した。映画「容疑者」は、それほどの肉体的、精神的に高いモチベーションを求める作品だった。おかげで(?)彼は、4年前除隊した軍隊時代を思わせる“地獄行の扉”を、自から開けたわけだ。しかしコン・ユは、「その分、たくさんのことが学べましたね」と語った。


◆「容疑者」はアクション映画!できる限りのことは、全部見せよう!映画「容疑者」は“アクションの集大成”という評価を受けるほど、アクションシーンに重点をおいた。140分間という長いランニングタイムを引っ張っていくのもアクション。それは叩いて、壊して、爆音が絶えないものだが、そんな派手なアクションにも、長所や短所がはっきりしている。コン・ユもその点を知っていたため、「やるからには、むしろ自分が見せられること全てを、とことん見せてやろう」と思った。もちろんストーリーは充実した上に。
「これまでの韓国映画では、見たことのないものを撮影するので、できるだけ多くのことを見せたかったんです。スタッフの皆さんはその分野で10年以上のキャリアを持っているので、彼らが一緒に手がけるアクション映画はどんな作品になるだろうかと、大いに期待しましたし、僕も一緒にすることで、絶対迷惑はかけたくないと思いました。もし誰かが“この場面は、ハリウッド映画と似ている”と指摘したら、僕はあえてこう言ってあげます。“制作費は、ハリウッドの10分の1にもならないのに、こんな良質の映画に出会うことってなかなかありませんよ”と。僕だけでなく、現場のスタッフ方は本当に命賭けで一生懸命頑張りました。」
「容疑者」に対するコン・ユのプライドは、相当だった。9ヶ月間を一緒に笑って苦労したためか、映画に対するコン・ユの想いは、格別なものとなっていた。
「(笑いながら)他の作品より、なぜ『容疑者』には、これほどの愛着ができているのか、自分でも分からないです。韓国のアクション映画やジャンルの発展に、僕が何かを役立てたようで本当に嬉しいです。9ヶ月間に渡る撮影でしたが、まるで軍にまた入隊して厳しい訓練を受けるような気持ちでしたね。それが辛かったという意味というより、“戦友愛”のような感情が『容疑者』を通じて僕の心から湧いてきました。この映画は、俳優に大変な映画ではなく、スタッフをもっと大変にさせる映画です。なのにスタッフの方って、まったく疲れた顔もせず、それを見ていると、当然僕はもっと頑張らなきゃという気持ちになります。お互いにそのような尊敬心があって、最後まで呼吸を合わせたから、愉快に撮影することができたと思います。」


◆代役は殆どなし...飢えた獣にならなければならなかったまずは外的な部分にフォーカスを合わせた。肌も軽く日焼けして、メイクも濃い目にした。一匹のジャガーを想像しながら、飢えた獣を表現した。食事の献立に徹底し、ハードトレーニングを並行しながら体を鍛えた。それはチ・ドンチョルという人物が描くモンタージュが重要だったからだ。ダイエットに成功した秘訣について聞くと、コン・ユは「そんなダイエットは、二度としたくありません」と笑った。
「トレーニングは普段から着実にしてきましたけど、映画のために体を作るプロセスは、少し違うものでした。3ヶ月間は、ご飯やパンなどの炭水化物は口にしなかったし、お弁当を用意して撮影場を通いました。それは人間ができるダイエットじゃなかったと思います(笑)。それくらい厳しいダイエットをしてみると、気づかないうちに僕は、飢えた獣のようになっていました。“撮影現場→家→ジム”を行き来する生活ばかりで、根性ができる一方で精神が疲弊される気分でした。そんな僕の気持ち、きっとトレーナーさん以外には、誰も知りませんよね(笑)」
13年の役者人生の中で、これほど体を張ったことがあっただろうかと思うほど、コン・ユは「容疑者」に身を任せた。走って、倒れて、転んで、飛んでを何度も繰り返した。殆どのアクションシーンを代役なしでこなせたことは、彼がこの映画に対する愛情と、不安な気持ちがあったからだ。
「幸い大きな怪我はありませんでした。小さな怪我はよくあったけど、今まで体を鍛えてきたお陰だと思っています。それより、僕の体は自分の体ではないという気持ちでしたので、もっと体を鍛えました。もし僕が大きな怪我をしたら、すべての撮影スケジュールは崩れてしまいます。ですから、あえてもっと厳しく体を管理しました。アクションシーンは殆どが大変でしたが、特に絞首台で腕をひねるシーンは本当に大変でした。気を失うところだったんです。リアリティを出したいと思って、首をもっと締めてもらいましたけど、サインが合わなかったのか、思ったより強い力で締めてきたので、“やばいッ!”という瞬間もありました。」


◆ジャンル問わず、既婚男性の演技もやってみたい「容疑者」はアクションが中心だが、ストーリーにも充実した。チ・ドンチョルの物語を全て見せられなかった部分は、多少惜しく感じられるところだが、彼を中心とした登場人物らの物語も比較的よく描いている。アクションに隠れて映画のストーリーがうまく伝わらない可能性を心配したのは、コン・ユも同じだった。
「チ・ドンチョルが持っている感情の大きな軸は、父親の愛でした。ドンチョル役を演じることで、“父の愛”は僕にとって最大の課題でしたね。映画には登場しないですが、ドンチョルには、妻と子供に関連した暗い過去があります。それを全て理解してから演技することでした。またドンチョルは、北朝鮮のスパイというより、海外で働くブローカーみたいな存在です。自分の人生なんてどこにもない、そんな中で国に捨てられるんです。僕はその人が感じる喪失感ってどんなものだろうかと考えてみました。なかなか想像がつかなかったけど、そんな人生って、ただ死んだものと同様だと思えばって」
「容疑者」は、コン・ユにとって初のアクション挑戦作でもあるため、関心も高かった。その反面、これまでロマンチック・コメディジャンルが主流だった彼に、“コン・ユが演じる本格アクション映画”は、ファンと観客に想定外のことになる。しかしコン・ユは、映画「トガニ 幼き瞳の告発」(2011年)などを通じて演技変身を試みて、成長に取り組んだ。にもかかわらず、まだロマンチック・コメディの陰から離れられない13年目役者コン・ユに、演技変身はどんな意味だろうか。
「変身には大きな意味を置かないんです。映画の中で置かれている状況が重要だと思いますし、“演技変身をするべきだ、しない”というふうには考えていないです。これまではたまたまロマンチック・コメディが多かったと思いますが、作品をするたび僕には難しかったです。「あなたの初恋探します」(2010年作)の時も同じでした。“コン・ユ”になってはいけなかったんです。『容疑者』はなおさらでしたね。チ・ドンチョルという人物から、徹底的に“コン・ユ”を排除しましたし、撮影終始それを考えながら注意する必要がありました。観客の方が『容疑者』を初めてご覧になって、違和感が感じられなかったら成功だと思います。


シングルであり、多くの女心を揺さぶってきたコン・ユは、映画「トガニ 幼き瞳の告発」から「容疑者」まで、子持ちの既婚男性役を演じた。既婚者の演技に負担を感じたことはないかと聞くと、「僕はもう34歳です。子供がいてもおかしくない年ですよね。子供がいる友達もいますし、そのためか、既婚男性演技がそんなにぎこちないとは思わないです」と笑顔を浮かべた。
「(笑いながら)偶然なことに2作とも既婚男性の演じましたけど、キャラクターに対する拒否感はないです。難しいのは、実際の父親ではないので、感情を想像しながら演技することです。俳優として多様な演技をすることは、非常にいいことだと思います。年をとっていけば、それなりの経験も積み重なって、それらを演技で表現できることも重要ですね。役者って、本人が持っている経験が一番大切だと思います。やたらに隠したり、時間を逆らっていこうとは思っていませんので、僕もそのようなものを自然に受け入れるようになりました。」


歩んできた道より、これから進んでいく道が長いコン・ユは、どのような俳優として人々に記憶されたいだろうか。単に商業的な俳優として年をとりたくないと語るコン・ユは、意味深い最後の言葉でインタビューを終えた。
「商業的に消費される俳優にはなりたくないです。観客を導く俳優になりたいです。もちろん、商業的な傾向が強い俳優も重要ですが、小さな映画にも出演する俳優になりたいんですね。商業映画と自主映画みんなで観客を満足させる俳優が目標です。これから行く道は、まだまだ遠いですね。ハハハ!」


[インタビュー後]映画「容疑者」を導いた俳優コン・ユは、映画の興行についてよっぽど心配したようだ。純制作費70億ウォン(約7億円)がかけたことだけではなく、9ヶ月間に渡って映画の撮影をともにしたスタッフ、そして自分をはじめパク・フィスン、ユ・ダイン、チョ・ソンハなど、共演者たちの苦労を知っているからだ。インタビューの途中、予想興行成績を聞いてみると、コン・ユは笑い始めた。観客をどれくらい集めるかは知らないが、たくさんの人が一生懸命努力しただけに、報われたい!とう意味だった。
「うまくいったら当然嬉しいです。失敗を願う人は誰もいないはずです(笑)。欲を言えば500万人くらいですかね」
映画「容疑者」は、昨年12月24日の公開以来、現在まで(1月7日基準)累積観客317万6、941人を記録し、順調な興行成績を収めている。コン・ユの目標500万人の観客動員もこのような流れでいけば、無難に達成するとみられる。

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