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昼は弁当屋・夜はバスケ選手…札幌出身・田尻洋輔が見据える「3人制バスケット」いま&その先

STVニュース北海道 2024年7月8日 15時28分

2024年7月6日にエスコンフィールド(北広島市)で開催された3人制バスケットボールのプロリーグ「3x3.EXE PREMIER(スリーエックススリー・エグゼ・プレミア)」。

この大会に、地元・北海道から「FUz HOKKAIDO.EXE(フーズ・ホッカイドウ・エグゼ)」が出場しました。このチームの代表かつ選手としてチームを引っ張るのは、札幌市出身の田尻洋輔選手(37)です。

小学2年生からバスケを始めた田尻選手。その経歴は決して華々しいものではありませんでした。

東海大四中を経て強豪・仙台高校に進学するも、3年生になるまでユニフォームをもらうことができず、出場機会に恵まれませんでした。大学は地元に戻って北海学園大に進学。チームを3年連続で全国大会に導くものの、いずれも1回戦負け。それでも尽きない向上心で30年にわたってプレーを続け、3×3のプロ選手へと成長しました。

一般的にバスケットボールの世界で37歳は「超」がつくベテランです。それでも田尻選手がバスケを続けるワケは、「競技を通じた多くの出会いがあり、ワクワクにつながってきたから」だと言います。

3人制バスケとは通常のバスケの半分のコートで争う競技です。5人制のバスケよりも少ない人数でも試合することができ、攻守の切り替えの早さが魅力です。東京五輪では日本男子が世界の6位、女子が5位となり、日本での認知も広がってきました。

しかし大きなマーケットへと進化したB.LEAGUEと違い、3×3はプロバスケ選手と言っても、まだまだそれだけでは食べていけない世界です。田尻選手は朝早くから昼過ぎまで家業の仕出し弁当屋で調理や配達に勤しみ、夕方はチームの営業やマネジメント。ようやく夜にチームメイトとバスケの練習という日々を送っています。

そこまでして田尻選手が3人制バスケと弁当屋の二刀流に挑むわけは「すべては、ワクワクする未来のために」という哲学です。

今、日本は子どもの数が減り続け、5人制バスケをやることもままならない地域が増えてきています。そんな中で「3人制バスケという可能性を提示することが出来たら、バスケを楽しむ子どもたちを増やせるのではないか。そして子どもたちのワクワクにつながるのではないか。」そう考えた田尻選手は志を同じくした仲間たちと2021年にチームを設立。さまざまな自治体や企業の支援を得るために奔走し、今季でプロリーグ参入3シーズン目を迎えました。

そして7月6日。北海道日本ハムファイターズの本拠地・エスコンフィードで行われた今季唯一のホームゲーム。3塁側エントランスには3×3用の特設コートがしつらえられました。そして、コートの周りにはFUzのファンのみならず、エスコンフィールド観光に来ていた観客らの姿。その中で始まったFUzの試合。立ち上がりから相手に最大5点のリードを許しますが、田尻選手のドライブや2ポイントシュートなどで追い上げを見せ、試合残り25秒で1点差まで詰め寄ります。粘り強い田尻選手らのプレーに観客の声援と拍手が徐々に大きくなっていきます。田尻選手は「これまでに見たことがなかった光景で、客の歓声が起きたときには鳥肌が立った」と振り返ります。

しかし、粘りは及ばす。FUzは1点差でゲームを落とし、予選敗退となりました。ゲームを終えた田尻選手は「今日どこのチームよりも勝ちたかったのは自分たち。ホームの後押しをもらっても勝てなかったのは自分たちの責任です。勝つべき時に勝てないと見に来てくれた人たちに魅力を伝えられません。しっかり勝ち切れるチームに成長していきたいです」と今後のチーム力の向上を誓っていました。

まだまだ向上心が尽きない37歳・田尻洋輔-。弁当屋とプロバスケ選手の二刀流というハードな日々の中、北海道の人たちにワクワクを届けるためこれからも奮闘し続けます。

【プロフィール】田尻洋輔(37)札幌市出身。3×3プロクラブ【 FUz Hokkaido.exe】選手兼代表。家業の仕出し弁当屋では調理も配達もこなす。武器は正確な状況判断とロングシュート。

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