【動画】早産で仮死状態 生まれつき全盲の双子 「自分の力で生きる」前を向いて歩む兄弟に密着
「はり」や「きゅう」など東洋医学が注目され、資格を取り就業しようという人も増加傾向です。
生まれながらに全盲の双子で、資格取得を目指す若い兄弟がいます。
「世の中にある“隔たり”もほぐしたい」という彼らの奮闘にカメラが密着しました。
“はり師・きゅう師”を目指す…生まれつき全盲の双子
2024年8月の富良野に、笑顔と歓声がはじけたサマーキャンプ!
病気や障害のあるなしにかかわらず、ごちゃ混ぜになって楽しむから、その名も“いけまぜ夏フェス”です!。
20年以上続くイベントで、普段体験できない様々なことに挑戦します。
(中村泰騎さん)「みんな楽しんでいくぞー!」
ライブも始まりました!会場の熱気は最高潮!
その中心にいるのは…地元・富良野出身の中村泰騎さんと翔綺さん。
2人は生まれつき目が見えない全盲の双子です。
(中村翔綺さん)「痛みとか違和感あったらおっしゃってください」
2人の生活の拠点は札幌にある特別支援学校。
はりやきゅうの技術を学ぶ毎日。
(教諭)「(はりを)まっすぐ刺すということに関しては、弱視の生徒に比べて苦労は多い」
なによりも大事なのは「指」。
指の感覚で体のツボを覚えるのです。
この学校は先生もほとんどが視覚に障害を持っています。
はり・きゅうの資格を取るには、実技だけではなく授業も必修です。
教科書を読むのに使うのは「点字ディスプレイ」という機械。
指で点字をたどり、内容を理解します。
ここでも「指」が目の役割を果たすのです。
(中村翔綺さん)「小さいころから訓練・練習するので」
普段ふたりは寄宿舎で生活しています。
この日は休みで、富良野の実家に帰ってきました。
皿洗いも、洗剤やスポンジの位置を“指”が覚えているのでお手の物!
(母・孝子さん)「いつもいないときに洗ってくれるので、洗ってくれるの見るのは初めて。こんなに丁寧にと思いました。そしてめっちゃ泡泡」
(母・孝子さん)「ありがとう、めっちゃ助かる」
早産で仮死状態 家族一丸となり歩んできた日々
ふたりが生まれたのは2000年11月。
母親の孝子さんが、2人が生まれた当時の記録を見せてくれました。
(母・孝子さん)「肺がちゃんとできていない、自発呼吸ができないので、保育器の中で高濃度酸素という形になった」
妊娠27週の早産。
仮死状態で生まれた2人は産声すらあげられず。
蘇生が叶い、ようやく5か月後、2人は退院できましたがー
(父・友一さん)「網膜症の症状が出てきたのを伝えられて、ショックでした」
そのとき告げられた病名は「未熟児網膜症」。
命と引き換えに、ふたりの目からは光が失われたのです。
食べることも、歩くこともー
家族一丸となってひとつずつ、ちょっとずつ…
音楽もそのひとつです。
小学生の時から“いけまぜ夏フェス”にも参加し、可能性を信じてできることを増やしてきました。
成長したいま“いけまぜ夏フェス”では得意の音楽だけではなくー
あん摩でも兄弟で大活躍です!
(中村泰騎さん)「辛いと感じているところとかありますか?」
(あん摩を受けた人)「肩こりです」
(中村泰騎さん)「ありがとうございました」
(あん摩を受けた人)「気持ちよかったです。力加減もちょうどよくて」
(中村泰騎さん)「楽になった、気持ちよかったと言われるのが本当にうれしいので、やってよかったです」
「自分の力で生きる」兄弟の新たな挑戦
自らの障害を受け入れ、向き合ってきた双子の兄弟。
しかし、生活の中で感じる、目が見える人との「隔たり」。
(中村翔綺さん)「健常者は障害者をどのようにサポートしたらいいのかわからないので、電車とホームの間に落ちかけたりして、それは悔しかった」
(中村泰騎さん)「見えているからできて、見えていないからできないことは世の中すごく多い。何に対しても」
この秋、ふたりはある挑戦をしました。
地元・富良野で開かれた朗読会への参加です。
(中村翔綺さん)「ソバや待ってくれ」
弟・翔綺さんが披露したのは、大好きな落語の演目「時そば」。
(中村翔綺さん)「7、8、9…何杯ですか?4杯です。これが、時そばでございます」
「指」で読む。
相棒の「点字ディスプレイ」とともに、兄・泰騎さんが朗読したのは「僕のこと」。
自らつづった文章です。
(中村泰騎さん)「子どものときは視覚障害者が着替えをするだけですごい、えらいと目頭熱くして鼻すする人いましたね。いまもだけど。僕らは3歳のころから特別支援学校の寄宿舎に入っていたから、家で生活をしたことがあまりない。だから地元の人とふれあう、知り合うチャンスはなく、ましてや友達なんて皆無。仕事をし、税金を支払い、友人をつくり、飲みすぎて失敗したり、恋をしたり、泣いたり笑ったりしてこの富良野で生きていきたい。応援よろしくお願いします」
(朗読を聞いた人)「ここに生活を根差して、ここで生きていくという強い思いを受け取ることができました。これからも頑張ってほしいし応援していきたい」
自分たちを発信することー
それが「隔たり」をなくす一歩だとふたりは考えています。
(中村泰騎さん)「どんなに重い障害があっても、同じ人間には変わりないんですよ。僕らがたまたま全盲で生まれてきてしまったというだけで、障害があっても自分の力で生きようと頑張っているんだというのを知ってほしい。これが僕の思い」
(中村翔綺さん)「目の前に障害者がいるということにビビらず勇気をもって、ひと言声を出してもらえるような世の中になってほしいなと思う」
誰もが自分らしく生きられる社会を目指してー
双子の兄弟の挑戦は始まったばかりです。