石破首相は29日に「年収103万円の壁」の引き上げを表明しました。
「働き控え」の解消につながると期待が寄せられている一方、ある懸念の声も聞かれました。
(石破首相)「いわゆる103万円の壁については、令和7年度税制改正の中で議論し、引き上げます。政府としては、この経済対策をできるだけ早くお届けできるよう、速やかに補正予算を国会に提出いたします」
29日の所信表明演説で「年収103万円の壁」の引き上げを表明した石破首相。
「少数与党」として臨時国会に臨むなか、国民民主党の看板政策を取り入れる形となりました。
小樽市内の土産店で働く籠島映未さんです。
現在は、年収が103万円を超えるとその分が所得税の課税対象となってしまうため、超えないよう“働き控え”をしてきました。
籠島さんは小学生から高校生までの4人の子どもを育てています。
子育ての出費もかさみ、年収の壁の引き上げを心待ちにしていていました。
(籠島映未さん)「うれしいというかようやくっていうところではあります。上がるっていうのが決まれば、自分の働き方は変わっていくなというのが見えてきた」
(記者)「収入が増えたら何欲しい?」
(子ども)「新しいスイッチが欲しい」
札幌市内のスーパーです。
特に、年末に向かういまの時期は働き手不足に直面するため、年収の壁の引き上げは「働き控え」の解消につながると期待を寄せていますが、こんな懸念もー
(パート従業員)「社会保険にならないように週30時間と決めている。社会保険に入らないで働いているので、会社に負担をかけないで働きたいので、そこが引きあがると生活の足しになるのかなと思う」
実は、年収「103万円の壁」とは別に、いわゆる106万円・130万円の壁が存在します。
これを超えると社会保険料の支払いが必要になる上、企業側も一部を負担しなければなりません。
(キテネ食品館 中塚誠社長)「103万が178万に上がるのであれば、130万も同じように190万200万に上げてもらえないと、皆さんの所得が上がらないのではないかと現場としては思う。社会保険の負担もするとなると、なかなか会社を経営していく、パートが多い会社であればあるほど厳しくなる」
働き手と雇い主を悩ませる複数の壁。
厚生労働省は現在、社会保険料の支払いについて年収と企業規模の要件を撤廃するかどうかなどを議論していますが、壁を意識せずに働ける環境づくりが求められます。