【動画】桂田社長の逮捕・起訴でも…癒えるこのない悲しみと苦しみ 被害者家族が集団提訴 知床・観光船事故
2022年に26人が亡くなった北海道知床の観光船沈没事故で、2024年は大きな動きが2つありました。
運行会社社長の逮捕・起訴。
そして、被害者家族の集団提訴。
いまなお癒えることない悲しみ、そして苦しみ。
知床・観光船事故の2024年を追いました。
「…」桂田精一被告、2年半ぶりに公の場も…無言
2年半ぶりに公の場に姿を見せた桂田精一社長。
この時は「被告」になっていました。
(記者)「ご遺族に何か一言ないですか?」
保釈された2024年10月11日。
この日も記者の問いかけに無言を貫き、被害者家族への謝罪はありませんでした。
悲惨なあの事故から2年半。
2024年、大きな動きがありました。
事故から2年…会見一度きり…口を閉ざす“思惑”
9月18日。
業務上過失致死などの疑いで、観光船の運航会社の桂田精一社長を逮捕、その後、起訴。
(桂田被告)「刑事裁判の場では本件事故に関わる私個人の認識や記憶していることをきちんと申し述べたいと思います」。
2024年、道警が公開した海底120メートルに沈没した直後の観光船KAZUⅠの姿。
20人の死亡が確認され、いまも6人の行方が分かっていません。
桂田被告が会見を開いたのは事故から4日もあと。
公に口を開いたのはこの時だけです。
他人事か…「悲しいだろうけど、今回はいいきっかけ」
STVの取材には、他人事のような発言もー
(桂田被告)「僕は船の検査は通ってるからいいものかと思っていましたね。(海の)シケとか天気は関係なく、いつでもそういうこと起こりえた。ちゃんと法整備しないと、今回がいいきっかけだと思うから。まあ、亡くなった人は悲しいだろうと思うけど」
(記者)「謝罪してほしいという家族がいるが謝罪の予定は?」
(桂田被告)「本当は全員の方に行こうかと思ったんですが、基本的には来てほしくないという方がいらっしゃって。謝りに来てほしいという声は聞くが、じゃあそれでその方のために例えば全員のところに行くかというと、そこまでではない」
捜索ボランティアを続ける漁師 熟知した知床で”衣類”や”遺骨”を次々と発見
知床半島・羅臼町で43年前から漁師をする桜井憲二さん。
事故発生直後からボランティアで捜索活動を続けてきました。
(桜井憲二さん)「(当日午前)9時くらいにはシケてきていた。観光船が出るのはまさかと」
桜井さんは事故が発生した2022年から、継続して知床岬周辺の捜索を続けてきました。
現場付近ではすぐ目の前にクマの姿もー
警察や海保の捜索も難航するなか、熟知した知床で、衣類などの遺品や遺骨を次々と見つけました。
(桜井憲二さん)「みんな協力して探してほしい」
ことしの捜索で”被害者のカメラ”発見 復元された写真には…
2024年8月の捜索では、このカメラを発見。
沈没事故で亡くなった本州の男性のものでした。
両親の元に届けられたそのカメラの中には、あのときの知床の風景が残っていました。
(男性の両親)「桜井さんをはじめ、ボランティアの皆様に大変感謝しています。奇跡ですし、息子が最後に見た景色に感慨ひとしおですが、写真を見ていると、今日の知床遊覧船には乗るなよと声をかけたくなります」
苦渋の決断する被害者家族も…「認定死亡」を受け入れ
2024年、もうひとつの大きな動きがありました。
いまなお7歳の息子とその母親の行方がわかっていない帯広市の男性も苦渋の決断をしたのです。
事故当日の朝に「今から船に乗る」と連絡をくれた最愛の我が子。
2024年7月。
被害者家族らが15億円の損害賠償を求める民事裁判を起こしました。
帯広市の男性は裁判に参加するため、やむなく認定死亡を受け入れたのです。
ところが桂田被告側は請求の棄却を求めています。
(帯広市の男性)「これだけ(多く)の方が犠牲になった大きな事故で、(桂田被告が)棄却を求めるのは全く反省していないと思う」
被害者家族のために…洋上慰霊を目指し寄付募る
知床の漁師・桜井憲二さんは、捜索ボランティアを通じて被害者家族と交流を続けるなかで、ボランティア仲間と動画を製作しSNSに投稿しました。
(桜井憲二さん)「事故が起きた海域で被害者家族を招いて洋上慰霊を行ってあげられないか。寄付していただける方は気持ちの範囲で協力いただけると幸いです」
全国に渡る被害者家族に知床の海で慰霊させてあげたい。
ボランティア仲間にもその思いは広がっています。
(捜索ボランティア 中島圭一さん)「被害者家族は(事故から)2年は短くて悲しみの底にいる。少しでも前に進めるように協力することが大切」
洋上慰霊望む家族は50人以上…目標額1000万円
洋上慰霊を望む被害者家族は50人以上。
移動費や宿泊費、船をチャーターする費用など目標額は1000万円です。
(桜井憲二さん)「国の組織などが(洋上慰霊を)する様子もなかったので、時間が過ぎていくだけなので、いま動かないとダメだなと」
息子とその母親がいまなお行方不明の帯広市の男性は、事故で絶たれた未来に、揺れる心境を吐露します。
(帯広市の男性)「捜索はもちろん、来年の洋上慰霊など言葉では言い表せないほど感謝しています」
(記者)「(桂田被告は)説明はあの会見以来なかった?」
(帯広市の男性)「まったくないですね。人命を軽視しない運航を心がけていれば事故は起こらなかった」
事故から2年以上。
社長逮捕に被害者家族の提訴。
大きな動きのあった2024年。
頑なに口を閉ざしてきた桂田被告は法廷の場で何を語るのかー
初弁論は2025年3月13日です。