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悪化する日本の安全保障と「海外渡航に与える影響」とは【政治学者が見る世界の今】

TABIZINE 2022年5月30日 7時30分

比較政治や国際政治経済を専門とする政治学者の筆者が、世界の情勢を考える人気シリーズ。今回は、ウクライナ情勢や日米中関係による海外渡航の現状と、今後考えられる影響などを考えていきたい。※写真はすべてイメージです

Gints Ivuskans / Shutterstock.com

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バイデン大統領の訪日とその影響とは
2022年5月、バイデン大統領が訪日したことがメディアでも大きく取り上げられた。岸田総理との日米会談では台湾侵攻を否定しない中国、ウクライナへ侵攻したロシアへの懸念が共有され、その翌日に開かれた日米豪印によるクアッドでも同様のことが議論された。


﹏﹏﹏﹏﹏ / Shutterstock.com

しかし、それに合わせるかのように、中国軍とロシア軍の爆撃機が日本海や東シナ海、西太平洋上空で長距離にわたって共同飛行しているのが確認され、北朝鮮は日本海に向けてミサイルを3発も発射した。中国、ロシア、北朝鮮ともバイデン大統領の日韓歴訪やクアッド会合をけん制する意図があったことは間違いないが、日本周辺の安全保障環境はいっそう厳しさを増している。

中国海警局の巡視船による日本領海への侵入は既に常態化しており、最近でもロシア海軍は4月、ロシア極東沖の日本海でウクライナ侵攻の際にも使用した巡航ミサイル「カリブル」の発射実験を行い、3月にも北方領土の国後島でロシア軍による軍事訓練が実施された。北朝鮮は5月4日にも今年13回目となるミサイル発射を行っている。


軍事的威嚇による日本人の海外渡航は

Vytautas Kielaitis / Shutterstock.com

とはいえ、基本的にこのような軍事的威嚇によって日本人の海外渡航が大きく制限されることはないだろう。しかし、ロシアがウクライナに侵攻したことによって日露関係は悪化し、現在、日本と欧州と結ぶ航空便は一部で運休が出るだけでなく、ロシア上空を避け中央アジアなどを迂回しており、通常より3時間から4時間も時間が掛かっている。また、それによって燃油サーチャージも上がっている。

さらに、現在のところ大きな影響ないが、専門家の間では今後の日中関係の悪化が懸念されており、中国への出張や旅行などで今後影響が出てくる恐れもある。

バイデン大統領の訪日のように、日本は米国との関係を重視しているが、中国はそれに対して強い不満を持っており、最近も中国外務省が中国にいる日本大使を呼び出し厳重注意することがあった。日中関係が悪化すれば、日本人の入国制限などが課される可能性も十分にある。



冒頭に述べた安全保障情勢は、出張や旅をする日本人には関係のないことのように映る。しかし、そういった国と国との関係悪化が進めば、経済制裁や資産凍結、輸出入規制、そして渡航制限というような形で人々の旅行、出張計画などにも大きな影響を及ぼすようになる。

このまま新型コロナウイルス感染症が落ち着けば、日本人の海外渡航も劇的に増えるだろうが、ぜひとも皆さんには安全保障、そしてそれがどう経済へ影響が波及するかを注視してもらいたい。

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