横浜の中華街や新大久保のコリアンタウン以外にも、日本には外国人の集まる街がたくさんあります。ネパール、ベトナム、タイ、ミャンマーなどなど、海外に行ったような気分になれる外国人街を、外国人コミュニティの取材を続けているライターの室橋裕和が案内します。第6回は、バングラデシュの人たちが集まる東京都北区十条です。
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バングラデシュ人が多い十条
東京北区、十条。埼京線の駅を出ると、すぐにアーケード商店街が広がっています。庶民的な活気あふれるここ「十条銀座」は、都内でも指折りの元気な商店街ですが、行きかう人たちの中に、ちらほらと南アジアの顔立ちを見かけます。
池袋から2駅6分。便利な立地で物価も安い十条駅近辺
雨の日も安心のアーケード商店街に、最近はアジアの風が
ヒジャブを被ったイスラム教徒の女性がベビーカーを押している姿もあれば、彫りの深い顔立ちのオジサンたちが八百屋で買い物をしていたりします。
そんな人々の多くが、バングラデシュ人なんです。
だから彼らの生活に必要なハラル食材(イスラム教の戒律で食べることを許されたもの)のショップがあったり、都内でもなかなか数の少ないバングラデシュのレストランがあったりと、街にエスニックな香りを与えています。
十条から東十条にかけてハラル食材店が点在
ビリヤニとテハリの違い
そんな一軒「サディアカレー&ビリヤニハウス」にお邪魔すると、すぐに店主のフサインさんが笑顔と日本語で声をかけてきます。
「バングラデシュの料理は初めてですか?」
メニューは南アジアになじみのない日本人でもわかりやすいインド風のカレーもありますが、「ニハリ」(羊肉や牛肉をスパイスで煮込んだシチュー)や、「ハリーム」(麦や豆、肉の煮込み)あたりがおすすめだとか。これらはバングラデシュ人を含む、南アジアのイスラム教徒に愛されているソウルフードです。
「これもおいしいよ。今日来たお客さん、日本人もバングラデシュ人もこればかり注文した」と言われたのが「テハリ」。一見すると南アジア一帯で食べられているスパイス炊き込みご飯「ビリヤニ」に似ていますが、テハリは「ビリヤニほどスパイスを入れない」とフサインさん。それにテハリはビリヤニのような長粒米ではなくおもに短粒米を使うなど、店や家庭によって作り方は異なるようです。
スパイス控えめながら牛肉のエキスがしみ込んだテハリ
食後は自慢だというチャイをいただきながら、フサインさんのお話を伺いました。南アジアの激アマスナック「ジャレビー」や「ラドゥ」も売っていて、これは新大久保にあるハラルショップにも卸している評判の品だとか、十条にいるバングラデシュ人は東部クミッラの出身の方が多いとか。
砂糖のシロップしみしみの揚げ菓子ジャレビーと、ひよこ豆と砂糖からつくったラドゥ。どちらも甘いけどクセになる
ちなみにバングラデシュの家庭料理「ボッタ」(じゃがいもやナスなどの具をマスタードオイルとスパイスで和えてマッシュしたもの)は金曜日に出すことがあるのだとか。
来日10年、店を開いて3年ほどというフサインさん。ラドゥを1個サービスしてくれました
日本の商店街に馴染む南アジア料理
にぎやかな商店街といえば、あちこちで総菜を買うのが楽しいものですが、十条銀座の場合は日本の店に混じってバングラデシュ人も通りに机を出し、お持ち帰りのカレーやタンドリーチキンなんかを並べていたりします。
そのうちの一軒「スターケバブ・ビリヤニハウス」の店頭からは、バングラデシュのおじさんが「いらっしゃい、どうですか!」なんて日本語で声を上げ、すっかり商店街に溶け込んでいる様子。
日本人も立ち寄ってインド総菜を買っていく「スターケバブ・ビリヤニハウス」
カレーやチキンはインド人がつくってこちらに卸しているのだとか
北区にバングラデシュ人が多い理由
そもそもどうして十条にこれほどバングラデシュ人が多いのでしょうか? 東京都に住むバングラデシュ人は5,193人ですが、そのうち最多の1,100人が北区に集住しています(2023年1月時点。東京都による)。
一説によれば、30年ほど前に東十条駅のそばで、バングラデシュ人がハラルショップを開いたことがきっかけだったとか。彼を頼りに留学生などが集まってくるようになり、やがて東十条駅前にはモスク「マディナ・マスジド東京」も建立。いつしか十条から東十条にかけての一帯はバングラデシュの首都の名から「リトル・ダッカ」なんて呼ばれるようにもなってきました。
パブと居酒屋に挟まれてモスクが。日本人でもイスラム教徒でなくても、マナーを守れば見学させてくれます
東十条駅のまわりに広がる商店街にも、やっぱりバングラデシュの店が点在しています。一見、インド料理屋やケバブ屋に見えても、経営しているのはバングラデシュ人だったりします。
ハラルショップやレストランなど、バングラデシュ人経営の店が十数軒あるという「リトル・ダッカ」
バングラデシュ人に加えて、十条にはネパールやベトナムの食材店、パレスチナやクルドのレストランまであって、なかなかの多民族混在ぶり。にぎやかな商店街は、アジアの人々にとって居心地がいいようです。
東十条と十条を結ぶ道の途中にネパールの食材店も発見
東十条と十条は徒歩でも10分足らずの距離。十条銀座から東十条の商店街まで、エスニック散歩を楽しんでみてはどうでしょうか。
日本の商店街に溶け込むように、外国人の店も並ぶ十条銀座
[All photos by Hirokazu Murohashi]
Do not use images without permission.
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バングラデシュ人が多い十条
東京北区、十条。埼京線の駅を出ると、すぐにアーケード商店街が広がっています。庶民的な活気あふれるここ「十条銀座」は、都内でも指折りの元気な商店街ですが、行きかう人たちの中に、ちらほらと南アジアの顔立ちを見かけます。
池袋から2駅6分。便利な立地で物価も安い十条駅近辺
雨の日も安心のアーケード商店街に、最近はアジアの風が
ヒジャブを被ったイスラム教徒の女性がベビーカーを押している姿もあれば、彫りの深い顔立ちのオジサンたちが八百屋で買い物をしていたりします。
そんな人々の多くが、バングラデシュ人なんです。
だから彼らの生活に必要なハラル食材(イスラム教の戒律で食べることを許されたもの)のショップがあったり、都内でもなかなか数の少ないバングラデシュのレストランがあったりと、街にエスニックな香りを与えています。
十条から東十条にかけてハラル食材店が点在
ビリヤニとテハリの違い
そんな一軒「サディアカレー&ビリヤニハウス」にお邪魔すると、すぐに店主のフサインさんが笑顔と日本語で声をかけてきます。
「バングラデシュの料理は初めてですか?」
メニューは南アジアになじみのない日本人でもわかりやすいインド風のカレーもありますが、「ニハリ」(羊肉や牛肉をスパイスで煮込んだシチュー)や、「ハリーム」(麦や豆、肉の煮込み)あたりがおすすめだとか。これらはバングラデシュ人を含む、南アジアのイスラム教徒に愛されているソウルフードです。
「これもおいしいよ。今日来たお客さん、日本人もバングラデシュ人もこればかり注文した」と言われたのが「テハリ」。一見すると南アジア一帯で食べられているスパイス炊き込みご飯「ビリヤニ」に似ていますが、テハリは「ビリヤニほどスパイスを入れない」とフサインさん。それにテハリはビリヤニのような長粒米ではなくおもに短粒米を使うなど、店や家庭によって作り方は異なるようです。
スパイス控えめながら牛肉のエキスがしみ込んだテハリ
食後は自慢だというチャイをいただきながら、フサインさんのお話を伺いました。南アジアの激アマスナック「ジャレビー」や「ラドゥ」も売っていて、これは新大久保にあるハラルショップにも卸している評判の品だとか、十条にいるバングラデシュ人は東部クミッラの出身の方が多いとか。
砂糖のシロップしみしみの揚げ菓子ジャレビーと、ひよこ豆と砂糖からつくったラドゥ。どちらも甘いけどクセになる
ちなみにバングラデシュの家庭料理「ボッタ」(じゃがいもやナスなどの具をマスタードオイルとスパイスで和えてマッシュしたもの)は金曜日に出すことがあるのだとか。
来日10年、店を開いて3年ほどというフサインさん。ラドゥを1個サービスしてくれました
日本の商店街に馴染む南アジア料理
にぎやかな商店街といえば、あちこちで総菜を買うのが楽しいものですが、十条銀座の場合は日本の店に混じってバングラデシュ人も通りに机を出し、お持ち帰りのカレーやタンドリーチキンなんかを並べていたりします。
そのうちの一軒「スターケバブ・ビリヤニハウス」の店頭からは、バングラデシュのおじさんが「いらっしゃい、どうですか!」なんて日本語で声を上げ、すっかり商店街に溶け込んでいる様子。
日本人も立ち寄ってインド総菜を買っていく「スターケバブ・ビリヤニハウス」
カレーやチキンはインド人がつくってこちらに卸しているのだとか
北区にバングラデシュ人が多い理由
そもそもどうして十条にこれほどバングラデシュ人が多いのでしょうか? 東京都に住むバングラデシュ人は5,193人ですが、そのうち最多の1,100人が北区に集住しています(2023年1月時点。東京都による)。
一説によれば、30年ほど前に東十条駅のそばで、バングラデシュ人がハラルショップを開いたことがきっかけだったとか。彼を頼りに留学生などが集まってくるようになり、やがて東十条駅前にはモスク「マディナ・マスジド東京」も建立。いつしか十条から東十条にかけての一帯はバングラデシュの首都の名から「リトル・ダッカ」なんて呼ばれるようにもなってきました。
パブと居酒屋に挟まれてモスクが。日本人でもイスラム教徒でなくても、マナーを守れば見学させてくれます
東十条駅のまわりに広がる商店街にも、やっぱりバングラデシュの店が点在しています。一見、インド料理屋やケバブ屋に見えても、経営しているのはバングラデシュ人だったりします。
ハラルショップやレストランなど、バングラデシュ人経営の店が十数軒あるという「リトル・ダッカ」
バングラデシュ人に加えて、十条にはネパールやベトナムの食材店、パレスチナやクルドのレストランまであって、なかなかの多民族混在ぶり。にぎやかな商店街は、アジアの人々にとって居心地がいいようです。
東十条と十条を結ぶ道の途中にネパールの食材店も発見
東十条と十条は徒歩でも10分足らずの距離。十条銀座から東十条の商店街まで、エスニック散歩を楽しんでみてはどうでしょうか。
日本の商店街に溶け込むように、外国人の店も並ぶ十条銀座
[All photos by Hirokazu Murohashi]
Do not use images without permission.
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