日本三大茶に挙げられるのは、静岡県の「静岡茶」と京都府の「宇治茶」、埼玉県の「狭山茶」です。この3箇所は、日本有数のお茶の名産地としても知られています。今回は、それぞれのお茶の歴史はもちろん、特徴や製法もご紹介。日本茶の奥深さに触れることができますよ。
鎌倉時代に僧が中国から種子を持ち帰ったのがはじまりの「静岡茶」(静岡県)
「静岡茶」はいわずと知れた日本を代表するお茶で、全国のお茶生産量の約40%を占めています。
静岡県で茶栽培がはじまったのは、鎌倉時代のこと。臨済宗の僧である聖一国師(しょういちこくし)が中国から種子を持ち帰り、現在の足久保に蒔いたのが起源です。
江戸時代になると、静岡茶は良質な茶生産地としての地位を確立。近年では、静岡茶を使ったスイーツや飲料が人気となり、若い世代にも親しまれるように。
静岡茶の代表的な加工法は「深蒸し茶」。通常の煎茶よりも長く蒸すことで、茶葉が柔らかくなります。それにより、甘くコクのある味わいに! 見た目が鮮やかな緑色になるのもポイント。
また、全国で8割弱、静岡県で9割以上のお茶の品種は「やぶきた」です。1908年、品質改良の先駆者である杉山彦三郎氏が見つけました。この原樹が竹やぶの北側にあったことが、名前の由来です。
この原樹は1963年に静岡県の天然記念物に指定されています。
そのほか、県内には茶畑を訪れるツアーや工場見学、茶摘み体験など静岡茶を五感で楽しめる施設が点在。
景勝地の日本平にある「全景の茶の間」や、藤枝市朝比奈地区にある「玉露の里」、抹茶ジェラートで有名な「ななや」の製造元・喜作園のお茶をテーマとした体験型総合施設「グリンピア牧之原」など、気になる施設がいっぱいです。
足利将軍家が珍重! 高品質な抹茶や玉露で有名な「宇治茶」(京都府)
京都府南部を中心に生産されている「宇治茶」は、高品質な抹茶や玉露で有名です。そんな宇治茶のはじまりは鎌倉時代とされています。土質や地形といった自然条件に恵まれていたことから、栽培が拡大したのです。
その後、特に足利将軍家の保護のもと、茶文化が発展。宇治茶は一級品の贈答品とされ、茶の産地を飲み当てる「闘茶」も行われました。
やがて喫茶と料理が組み合わされ、座敷飾りや茶道具を鑑賞する「茶の湯」が登場。16世紀に入ると、千利休らの要望に応えるかたちで、鮮やかで濃緑色の旨みの強い「抹茶」が誕生します。
18世紀には、永谷宗円が宇治田原町「湯屋谷」で宇治製法を編み出したことがキッカケとなり、「煎茶」や「玉露」が生まれました。
宇治茶は、鮮やかな緑色と繊細な香り、深い旨味が特徴。お茶の種類によっては茶葉を「覆い栽培」という手法を用いて、収穫の20日ほど前から遮光して育てます。これにより、渋みを抑えられ、甘みや旨味が増すのです。
京都府宇治市では、茶畑見学や茶摘み体験、宇治茶を使ったスイーツを楽しめます。宇治川周辺の景観を眺めながら、お茶について学べる「宇治茶道場 匠の館」のほか、本場の宇治茶のお点前を体験できる市営茶室「対鳳庵」などがありますよ。
京都旅行ついでに宇治にまで足を延ばして、お茶について学ぶのもおもしろそうですね!
厚い葉とコク深い味わいの「狭山茶」(埼玉県)
「狭山茶」は埼玉県を中心に栽培されている日本茶。主に埼玉県西部で生産される「狭山茶」の起源とされる茶は、「河越茶」(川越市とその周辺)と「慈光茶」(ときがわ町)です。
鎌倉時代には、抹茶の飲み方(点茶法)が広まり、茶の消費量が増加。しかし、その後に戦乱の世となり、茶産地も荒廃し、それに伴い「河越茶」「慈光茶」という銘柄も姿を消したと考えられています。
時を経て江戸時代中期になると、宇治湯屋谷の永谷宗円(ながたにそうえん)が、蒸気で茶葉を蒸してから揉んで乾かす「蒸し製煎茶」の製法を発明。それにより、狭山丘陵でも本格的な蒸し製煎茶の製造技術を導入しはじめ、「狭山茶」が広まっていくことになります。
なお現在「狭山茶」という名称は、埼玉県および隣接する東京都で栽培される茶の総称となっています。
狭山茶は茶産地としては冷涼なため、冬の間、茶樹を十分休ませるのが特徴です。これにより、葉が厚く、コク深い味わいに。
また、仕上加工(二次加工)として、「狭山火入れ」といわれる独特の火入れ技術を生かしています。この製法により、甘くて濃厚なお茶になるのです。
狭山茶を堪能したいのなら、入間市にある茶畑の中に佇む茶畑テラス「茶の輪」や、埼玉県狭山市北入曽にある、お茶摘み体験やお茶の葉の天ぷら試食などを楽しめる「味の狭山茶 宮野園」などを訪れるのがおすすめ。
週末に狭山茶に触れる体験をするのもいいかもしれませんね!
[参考]
JA静岡市
静岡茶商工業協同組合
静岡市
日本茶800年の歴史散歩|日本遺産ポータルサイト
公益社団法人 京都府茶業会議所
宇治市
入間市
入間市博物館
狭山市
[All photos by Shutterstock.com]
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鎌倉時代に僧が中国から種子を持ち帰ったのがはじまりの「静岡茶」(静岡県)
「静岡茶」はいわずと知れた日本を代表するお茶で、全国のお茶生産量の約40%を占めています。
静岡県で茶栽培がはじまったのは、鎌倉時代のこと。臨済宗の僧である聖一国師(しょういちこくし)が中国から種子を持ち帰り、現在の足久保に蒔いたのが起源です。
江戸時代になると、静岡茶は良質な茶生産地としての地位を確立。近年では、静岡茶を使ったスイーツや飲料が人気となり、若い世代にも親しまれるように。
静岡茶の代表的な加工法は「深蒸し茶」。通常の煎茶よりも長く蒸すことで、茶葉が柔らかくなります。それにより、甘くコクのある味わいに! 見た目が鮮やかな緑色になるのもポイント。
また、全国で8割弱、静岡県で9割以上のお茶の品種は「やぶきた」です。1908年、品質改良の先駆者である杉山彦三郎氏が見つけました。この原樹が竹やぶの北側にあったことが、名前の由来です。
この原樹は1963年に静岡県の天然記念物に指定されています。
そのほか、県内には茶畑を訪れるツアーや工場見学、茶摘み体験など静岡茶を五感で楽しめる施設が点在。
景勝地の日本平にある「全景の茶の間」や、藤枝市朝比奈地区にある「玉露の里」、抹茶ジェラートで有名な「ななや」の製造元・喜作園のお茶をテーマとした体験型総合施設「グリンピア牧之原」など、気になる施設がいっぱいです。
足利将軍家が珍重! 高品質な抹茶や玉露で有名な「宇治茶」(京都府)
京都府南部を中心に生産されている「宇治茶」は、高品質な抹茶や玉露で有名です。そんな宇治茶のはじまりは鎌倉時代とされています。土質や地形といった自然条件に恵まれていたことから、栽培が拡大したのです。
その後、特に足利将軍家の保護のもと、茶文化が発展。宇治茶は一級品の贈答品とされ、茶の産地を飲み当てる「闘茶」も行われました。
やがて喫茶と料理が組み合わされ、座敷飾りや茶道具を鑑賞する「茶の湯」が登場。16世紀に入ると、千利休らの要望に応えるかたちで、鮮やかで濃緑色の旨みの強い「抹茶」が誕生します。
18世紀には、永谷宗円が宇治田原町「湯屋谷」で宇治製法を編み出したことがキッカケとなり、「煎茶」や「玉露」が生まれました。
宇治茶は、鮮やかな緑色と繊細な香り、深い旨味が特徴。お茶の種類によっては茶葉を「覆い栽培」という手法を用いて、収穫の20日ほど前から遮光して育てます。これにより、渋みを抑えられ、甘みや旨味が増すのです。
京都府宇治市では、茶畑見学や茶摘み体験、宇治茶を使ったスイーツを楽しめます。宇治川周辺の景観を眺めながら、お茶について学べる「宇治茶道場 匠の館」のほか、本場の宇治茶のお点前を体験できる市営茶室「対鳳庵」などがありますよ。
京都旅行ついでに宇治にまで足を延ばして、お茶について学ぶのもおもしろそうですね!
厚い葉とコク深い味わいの「狭山茶」(埼玉県)
「狭山茶」は埼玉県を中心に栽培されている日本茶。主に埼玉県西部で生産される「狭山茶」の起源とされる茶は、「河越茶」(川越市とその周辺)と「慈光茶」(ときがわ町)です。
鎌倉時代には、抹茶の飲み方(点茶法)が広まり、茶の消費量が増加。しかし、その後に戦乱の世となり、茶産地も荒廃し、それに伴い「河越茶」「慈光茶」という銘柄も姿を消したと考えられています。
時を経て江戸時代中期になると、宇治湯屋谷の永谷宗円(ながたにそうえん)が、蒸気で茶葉を蒸してから揉んで乾かす「蒸し製煎茶」の製法を発明。それにより、狭山丘陵でも本格的な蒸し製煎茶の製造技術を導入しはじめ、「狭山茶」が広まっていくことになります。
なお現在「狭山茶」という名称は、埼玉県および隣接する東京都で栽培される茶の総称となっています。
狭山茶は茶産地としては冷涼なため、冬の間、茶樹を十分休ませるのが特徴です。これにより、葉が厚く、コク深い味わいに。
また、仕上加工(二次加工)として、「狭山火入れ」といわれる独特の火入れ技術を生かしています。この製法により、甘くて濃厚なお茶になるのです。
狭山茶を堪能したいのなら、入間市にある茶畑の中に佇む茶畑テラス「茶の輪」や、埼玉県狭山市北入曽にある、お茶摘み体験やお茶の葉の天ぷら試食などを楽しめる「味の狭山茶 宮野園」などを訪れるのがおすすめ。
週末に狭山茶に触れる体験をするのもいいかもしれませんね!
[参考]
JA静岡市
静岡茶商工業協同組合
静岡市
日本茶800年の歴史散歩|日本遺産ポータルサイト
公益社団法人 京都府茶業会議所
宇治市
入間市
入間市博物館
狭山市
[All photos by Shutterstock.com]
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