理想の父親像。昔は、お父さんと言えば「一緒に下着洗わないで」「お父さんのあとのトイレ(お風呂)はイヤ」と言われ、少しさびしい思いをしているものでした。
ドラマなどでそういったシーンが多かったせいか、特にドラマ全盛期を経てパパになった最近のお父さんは、セルフケアもしっかりしているので臭いもせず、むやみに権力を行使するなんて事も少ないようです。おかげで「パパと中学生くらいまでお風呂に入る」という女の子もいるとか。男の子でもお父さんと買い物に行く人もいるようです。
今回は、そんな記憶に残るドラマに出てきた印象的な父親を集めてみました。
基本的に子供の意思を尊重。いざとなったら手助けしてくれるパパ!
女性の人生を描くことの多い朝ドラ。最近では、「家族」を中心にしすぎて仕事をないがしろにしてしまう、尾美としのりさん演じる『あまちゃん』の正宗パパや、『ごちそうさん』の寡黙で頑固なのに娘を溺愛する原田泰造さん演じる大五、自由人ながらも娘の才能を見抜き、型破りな行動で道を拓いた伊原剛志さん演じる『花子とアン』の吉平など、魅力的なお父さんがたくさんいます。
そんな中、近年の朝ドラでもっとも「理想の父」ではないかと思われるのが、2011年『おひさま』の父、寺脇康文さん演じる須藤良一。
良家のお嬢様と駆け落ちして結婚するほどの情熱をもち、妻の看病のために転職して田舎へ引っ越すほどの家族思い。妻の死後は3人の子どもを男手ひとつで育て、子供を尊重しながら導く強さと優しさがあります。また、地元の名士にもしっかりと言うべきことは言い、一目おかれる強さ。父としても夫としても理想的です。
1991年から放送された昼ドラ『天までとどけ』。綿引勝彦さん演じるお父さんも家族思いで優しく、どっしりとした安定感があります。
新聞記者という知的な職業も素敵ですし、忙しい仕事ながらも八男五女の相談にものってくれるパーフェクトパパです。基本的に子育ては母任せではありますが、誇り高い仕事っぷりと、文筆業ならではの説得力のあるお説教、母への適切なアシストには脱帽です。
放送時にゲームのCMに出演していたのも「一緒にゲームに夢中になってくれそうなお父さんに見える」と話題になりました。この作品以前は極道モノが中心だったのですが、今はすっかり「お父さん」のイメージです。
もう少し頼りないけれど、2015年『デート~恋とはどんなものかしら~』の杏さん演じる依子の父(松重豊さん)も、男手ひとつで難しい性格の依子の良いところを尊重し、優しく見守ってくれていて素敵です。
あまりに強い依子にどうしても口では負けてしまうけれど、必死に娘のために動き説得する姿には愛があります。朝ドラ『ちりとてちん』では頑固おやじを演じていましたが、どちらの松重さんも素敵なお父さんです。
本音を言ってくれる!でも心配もしてくれる?まるで友達みたいなパパ!
「出ていけ」とすぐ言う、怒ってばかりのパパといえば、1987年『パパはニュースキャスター』の鏡竜太郎(田村正和さん)。
四角四面ですぐ怒鳴るため「しゃべりが硬く感情をあらわにするのは見苦しい」と評される、融通の利かないニュースキャスターです。急に隠し子(生意気盛りの小学生女子)が3人も現れて、独身貴族がパパデビューして“てんやわんやの大騒ぎ”です。
子供嫌いで怒鳴ってばかりですが、きれいごとを言わずに言いたい事を言う竜太郎パパは、気を使いすぎてぎくしゃくしている義両親や、男ができると平気で蒸発する母、腫れものに触るような扱いをする継父と一緒にいるより、ずっと本音で語ってくれて本気で叱ってくれるのです。
田村正和さんといえば、1991年の『パパとなっちゃん』も良かったです。小泉今日子さん演じる娘のなっちゃんが20歳~25歳までの恋多き時代を、父親目線で描いたこのドラマ。『パパはニュースキャスター』とは、最初のスタンスこそ違いますが、同様に娘を想い、娘に振り回される姿が印象的でした。
脇役ですが、2006年『のだめカンタービレ』の瑛太さん演じる、ヴァイオリン担当峰龍太郎のお父さんも素敵でした。
伊武雅刀さん演じる峰パパは、メンバーが集まる「裏軒」の主人。『子供達を責めないで』では子どもが嫌いなことを歌っていましたが、のだめでは子どもの夢を、食事で、気持ちで、資金で応援する優しいパパ。弱いところもたくさん見せてくれますが、無限の愛がストレートに伝わってきます。
1987年の『オヨビでない奴!』の風間家のバカ男3人組も仲良し親子。
高橋良明さん演じる風間遊介と、所ジョージさん演じる父、植木等さん演じる祖父、3代そろって適当で無責任で能天気なのですが、とっても楽しい一家でした。特に明るく優しいパパがうらやましい。年齢に関係なく本音でぶつかり、本気で楽しく生きていきたいと思わせるパパです。
とにかく頑張る。応援したくなるパパ!
ドジで頼りないところもあるけれど、一生懸命なところが尊敬できるのが、2004年『アットホーム・ダッド』。こちらは主人公がパパでした。
口が達者な幼稚園児の娘も、パパの一生懸命さは大好き。自分では文句を言うけれど、他の人が文句を言うことは許しません。お友達のママにも食ってかかりますし、おばあちゃんが作ったきれいな園バッグよりも、阿部寛さん演じるパパがたどたどしいながら一生懸命作った園バッグを、文句いいながらも使う姿は感動的でした。
不器用で照れ屋で表現が下手だけど、精一杯亡き妻を愛し、精一杯息子を愛してくれる武骨な父・安男と優秀な息子の人生を描いた『とんび』。
母は出産と同時に亡くなり、父は失踪・・・。一般的な愛情を知らずに育った安男(内野聖陽さん)ですが、自分なりに正しさ、まっすぐさを真剣に伝える姿は現代にはない熱さを感じます。
義理を軽んじれば叱り、権力を笠に着せれば鉄拳制裁。時に間違い、和解し後悔する。表現は素直でなくても、心は素直なところが応援したくなります。「偉そうに子育てなんかするもんじゃない」という安男の信念は見習いたいものです。
威厳はあって子ども思い。尊敬できるお父さん!
尊敬できるインパクトのある「父」といえば、やはりCMの犬パパでおなじみの北大路欣也さんでしょう。
16歳でドラマデビューした北大路さんの父親役といえば、2002年『子連れ狼』シリーズの拝一刀などが有名。寡黙で冷静、しかし心の中は熱く燃えたぎり、困っている人を見逃せない、尊敬できる“チャン”です。
2007年には『華麗なる一族』で木村拓哉さんと初共演。2015年の『アイムホーム』では再び木村さんの父で、CMで娘役を演じる上戸彩さんの舅役を演じました。こちらの父は豪快で適当でありながらも、心の底では子ども思いで優しい父親。華麗なる一族でもアイムホームでも、息子にとって良いことばかりの父ではありませんが、その異常な迫力と威厳は尊敬せざるをえません。
2014年の『なるようになるさ。』の舘ひろしさんも素敵でした。
威厳がありつつも優しさがあふれ、実子だけではなく通りすがりの困った人、妻や従業員、従業員の家族や近所の人までまんべんなく手助けしてくれます。実子たちは「ずるい!俺にもっと援助してよ」という哀しい状態なので、パパとして成功したのかしていないのか微妙なところではありますが、あんなにダンディなお父さん、絶対自慢しますよね。
最近の父親の理想像は、理想の男性と同じく「包容力」。最近は権力を剥きだしにするお父さんは逆に少ないため、「しっかり叱ってくれる」「どっしりしてあわてない」など、いざという時に頼りになるお父さんも理想のようです。
良いところばかりではありませんが、どの方も印象的なお父さん。あなたのお父さんはどのお父さんに近いですか?
今回選ばせていただいた、記憶に残るドラマの父親
『おひさま』「須藤良一」(寺脇康文)
『天までとどけ』「丸山雄平」(綿引勝彦)
『デート~恋とはどんなものかしら~』「藪下俊雄」(松重豊)
『パパはニュースキャスター』「鏡竜太郎」(田村正和)
『のだめカンタービレ』「峰龍見」(伊武雅刀)
『オヨビでない奴!』「風間又一郎」(所ジョージ)
『アットホーム・ダッド』「山村和之」(阿部寛)
『とんび』「市川安男」(内野聖陽)
『子連れ狼』「拝一刀」(北大路欣也)
『なるようになるさ。』「長島大悟」(舘ひろし)
文/藤原ゆうこ