夏も終わり少し肌寒くなってくると、なんだかちょっぴりさびしくなります。そんな時だから、涙は映画のせいにしてしまいましょう。涙は心の汗。新陳代謝を促して、心身共に健康美を目指しましょう。
定番はやっぱり泣ける!!死が二人を分かつまで・・・!!
“ベタ”というと悪口のように聞こえますが、やはり良いものだから定番となり、良いものだから“ベタ”と言われるようになるものです。
泣ける映画の定番と言えばまず、病という強敵に恋人たちが引き裂かれる悲恋ものでしょう。恋人たちの切ない愛、家族の葛藤、内なる敵である病魔との逃げ切れない闘い、その苦しみには涙せずにはいられません。
哀しい病魔もののパイオニアといえば、絶対外せないのが1964年『愛と死をみつめて』でしょう。
日活映画のゴールデンコンビ浜田光夫さんと吉永小百合さんが主演し、爆発的ヒットとなりました。大学進学を期に遠距離恋愛となった実在のカップルの往復書簡が原作です。
女性の顔が崩れていくという辛さの中、強く生きたミコ。そしてそれを支えたマコ。マコが劇中でミコのためにギターで弾いた『禁じられた遊び』も大人気になりました。
そして、2000年代も病魔ものが大人気となりました。そのきっかけは、2004年の『世界の中心で、愛をさけぶ』です。2001年に刊行され、クチコミでじわじわとブレイクしたこの作品は日本中を涙させ、その後の「純愛」「号泣」映画のヒットへと繋がりました。
ドラマ版の綾瀬はるかさんのはかなさ漂うアキも良かったのですが、ひまわりのようなまぶしい笑顔が魅力の長澤まさみさんのアキは、病魔と闘いながらも明るくふるまう健気さが印象的でした。
「なぜ、明るく元気だったあの子が病気に!!」とサクやアキの家族に共感せざるを得ませんでした。もちろん、サク役の森山未來さんの落ち着いた中に見える情熱的な演技も魅力です。
2006年『タイヨウのうた』など、病魔と闘う若い女性と、それを支える家族や恋人の物語はどれも号泣ものです。
無償の愛をささげたい!その気持ちが健気でたまらない
『セカチュー』以降、泣ける映画はヒットしまくりです。宮崎あおいさん演じる静流の片想いの美しさ、せつなさがたまらないのが『ただ、君を愛してる』。
一緒にいるのに「女の子」として見られていない辛さ、それでも好きで好きで、愛しているという静かにあふれ出る感情を、宮崎さんは見事に表現されています。無償の愛を送り続け、命をかけて彼好みの大人の女になろうとし、気を使わせないように細工をするなど、健気な姿に涙が止まりません。
同じ原作者の『いま、会いにゆきます』も大ヒットしました。どうしてその人が好きなのか、どうして好きになったのか、どういうところが好きなのか、美しい風景、映像とともに丁寧に描かれ心に染みます。
誰かが死んでしまう号泣映画ではありませんが、事故で80分しか記憶が持たない元教授の数字に対する愛や、周囲に対する愛がじわじわと伝わる、2006年『博士の愛した数式』。状況の悲惨さよりも、その愛情の深さに心を打たれます。
恋は自分でもどうすることができないもの
愛してしまった人に障害があった時、はたして自分は相手を支えることができるのでしょうか?
2003年『ジョゼと虎と魚たち』。足が不自由で乳母車で移動するジョゼ。包丁を持ち歩くなどちょっとはじけたお嬢さんです。好きになって添い遂げたいと思っていても、やはり彼女を一生背負うのは勇気がいります・・・。
恒夫の心の葛藤や弱さ、そしてジョゼの愛と理解がひしひしと伝わってきます。
死んだ恋人に出した手紙に返事が来た。そんなラブミステリーが『Love Letter』。愛する人を忘れられず2年たっても待ち続ける博子、そして恋人樹の中学生の頃の恋の思い出がリンクし、優しく懐かしい空気が伝わってきます。
やっぱり家族愛
誘拐犯と誘拐された女児の生活を描いた『八日目の蝉』。実の親子ではないけれど、子を思う母の気持ちは本物でした。逮捕される瞬間でさえ、子どもの朝食の心配をする親心には泣かされました。
懐かしい地元に行ってみたら、12歳のときに死んだ両親が普通に住んで生きていた『異人たちとの夏』。
40歳の息子を一回り年下の両親は、親として接してくれます。息子がどんな姿でも親はやっぱり親なんですよね。息子を思う両親の気持ちが痛いほどに伝わります。
子を思う親の気持ちとえいば、2013年『そして父になる』でしょう。
外から見たら完璧な親、名門小学校に通う完璧な子ども。取り違いがあり、育てていた息子は実は庶民的な電気屋さんの息子。利発で自分にも似ている実子も引き取りたいし、育てた息子にも愛着はある・・・。悩む大人と振り回される子ども。最適な行動が最高な行動ではないことを理解し、前に進もうとする福山雅治さん演じる良多。
実の子どもなのに出生届も出さず、結果的に死なせてしまったり、常識を知らない子どもにしてしまった2004年『誰も知らない』も、また違う涙が出てしまいます。
すべての愛とすべてのむなしさが詰まった戦争映画など、まだまだ泣ける映画はたくさんありますが、今回は“人と人とのつながり”で泣ける映画をセレクトしてみました。特に2000年代の恋愛ものはピュアで心が洗われるようです。定番すぎて敬遠されている方も、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか?
今回選ばせていただいた、泣ける邦画10選
『愛と死をみつめて』
『世界の中心で、愛をさけぶ』
『タイヨウのうた』
『ただ、君を愛してる』
『博士の愛した数式』
『ジョゼと虎と魚たち』
『Love Letter』
『八日目の蝉』
『異人たちとの夏』
『そして父になる』
文/藤原ゆうこ