最近、男子が活躍する料理番組が流行っています。それだけでなく、男女ともに料理ブロガーや家庭料理の達人が料理本を出したり、バラエティ番組にもひっぱりだこ。料理そのものもそうですが、料理をする手際の良さや、真剣な姿が人の心を引き付けるのかもしれません。
そして、それはドラマでも同じこと。魅力的な料理や料理人は、ドラマの素敵なスパイスになります。今回は、日本ドラマに出てきた料理人の中でも、特に印象に残ったキャラクターを10人あげてみました。
真似したい!?どれもこれもおいしそうな正統派料理人
昨年高視聴率をマークし、日本中を感動させたドラマ『天皇の料理番』。過去にも何度かドラマ化された名作です。カツレツやらザリガニのポタージュやら、もう全てのお料理がよだれもの。
料理や家族への愛にあふれる、佐藤健さん演じる秋山篤蔵氏。その姿からも料理への深い情熱が伝わってくるようでした。
細かい料理描写が見事だった池波正太郎さん原作『鬼平犯科帳』。ドラマ化に当たっても料理シーンはしっかりと再現されていました。
原作では鬼平自身が食べ歩いたり、家人に作ってもらったりと色々でしたが、1989年~の中村吉右衛門さん版のドラマでは、同心の猫どのこと村松忠之進が主に料理を担当され、色とりどりのお弁当や夜食をふるまっています。
見事な包丁さばきや料理の技術で、物語に奥行きをもたせてくれました。演じられた沼田爆さん自身は、実は料理はからっきしで食にも興味がないそうですが、語るうんちくは立て板に水。実に見事でした。
がんばるイケメンはうっとりするほどカッコイイ!
竹内結子さん主演の2002年『ランチの女王』。イケメン5兄弟が営む洋食屋さんに、食べるのが大好きなワケアリ女性なつみが、長男の婚約者(役)として同居を始めるラブコメディです。
長男(堤真一さん)は売上を盗むダメンズなのですが、料理に熱い情熱をそそぐ頑固な次男の勇二郎(江口洋介さん)、穏やかな笑顔と誠実さが魅力の三男の純三郎(妻夫木聡さん)、一見チャラいけれど、任された仕事はなんでもこなす優しく要領の良い光四郎(山下智久さん)。
さらに渋いお父様に若林豪さん、事情を知りつつなにかとフォローしてくれる後輩で、住み込み見習いのミノル(山田孝之さん)と、まさにイケメン揃い。
デミグラスソースの重要性を熱く語り、おしゃれレストランではなく、洋食屋にこだわる次男も、頑固オヤジ風でありながらも実は優しく見守ってくれる昔堅気の親父さまも料理人として見惚れてしまいますが、見習いミノルのナイフさばきもなかなか素敵でした。
自信満々で大学を辞めて料理人になった松本潤さん演じる伴省吾が、ドルチェやホールなど様々な経験を積みながらも、「人のために心からの料理を提供する」事を学んでいくドラマ2007年『バンビ~ノ!』。
顔の濃い松潤だからこそ、白いクックコートがよく似合います。『バンビ~ノ!』では「小僧(バンビーノ)」の通りに成長途中でしたが、2014年『失恋ショコラティエ』では恋に悩むカリスマパティシエでした。どちらも清潔で、松本さんの眼力同様まっすぐで素敵でした。
パティシエものといえば、2001年『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店~』もイケメン揃いでうっとりさせてくれたものです。女性が苦手で人との距離感がつかめない天才パティシエ小野裕介を藤木直人さん。
同性愛者と勘違いされて恋愛トラブルを起こしてしまうため、行く先々のお店を解雇されてきた小野ですが、才能豊かな上に確かにあんなに思いつめた瞳で見つめられたら・・・女性ファンはたまりませんね。
大切な人のために心をこめて
料理人がタイムスリップして戦国時代で現代料理を披露したら?という突飛な設定が人を引き付ける、2013年『信長のシェフ』のケンも印象的な料理人でした。人質になっても、暗殺されそうになっても、「人のため」に料理をし、結果的に武将たちの心をとらえるなど、真摯に料理に取り組む姿が素敵です。
バラエティ番組でワイルドに料理をする姿をプロデューサーが見て、玉森裕太さんを主演に選んだそうです。玉森さんはこの作品が連続ドラマ初主演。現在主演映画も好調ですし、まさに出世作ですね。
病気の母親の代わりに弟妹のためにご飯をつくるイケメン兄と、育ての家族、血のつながりのある家族との交流や、心の葛藤を描いた2015『明日もきっと、おいしいご飯~銀のスプーン~』。
主人公の律(高杉真宙さん)も、義弟・義妹のために心をこめて料理をつくり、ネグレクトに苦しむ実弟のために料理を作る心の料理人です。周囲の人々のために、優しさ一杯の料理を毎日作ってくれるエプロンの似合うイケメン。本当にたまりません。将来、実父と同じ建築士になるのか、養父と同じ料理人になるのか?原作の続きが楽しみです。
女性の料理は心を癒やす?
女性料理人ものには、「人のため」がさらに顕著なものが多いようです。
納豆嫌いな思い人のために作った納豆料理をきっかけに料理に目覚め、「ごちそうさん」の気持ちを食材に対しても忘れず、残さずに使いきる始末の料理を学んだり、家族のために創作料理を作ったり、ご近所やお客様にふるまったりと、大切な人のために楽しく料理を作るめ以子(杏さん)の料理人生を描いた2013年『ごちそうさん』。いきいきと料理をするめ以子の姿には生きる強さを感じました。
お客様と話をして、お客様のための料理しかつくれない2002年『マイリトルシェフ』の鴨沢瀬理(矢田亜希子さん)。傷ついた先輩シェフの心を料理でほぐそうとする1996年『おいしい関係』の藤原百恵(中山美穂さん)なども、「人のため」を大切にした料理人と言えるでしょう。
型破りで自由な天才シェフ
逆に、型破りで才能だけが突出したシェフもいます。人気ドラマ1995年『王様のレストラン』の磯野しずか(山口智子さん)などはまさにそれ。
メインシェフでありながらも、料理にこだわりはなく適当、タバコも平気でプカプカ・・・。しかし、料理の腕は一流で、それなりに料理やお店に対する情熱はあるようです。飄々とした態度や、橋幸夫ファンというコミカルな一面が愉快でした。
同じように、才能はあるのにぶっきらぼうで毒舌と、色々と性格に問題を抱えるのが、2012年『ハングリー!』の山手英介(向井理さん)です。天才的な料理の腕を持ちながらも、親の援助でバンド活動。バンド活動を諦めて母の店を継ごうとした直後に母が急死し、バンド仲間とお店づくりをするお話。
ちょっと無理があるかもしれませんが、そのちょっと無茶苦茶具合がロックです。料理もとても美味しそうで、料理本も大変人気となりました。
無茶苦茶といえば、2007年の『スシ王子!』(堂本光一さん主演)や料理界のSF『ザ・シェフ』(東山紀之さん主演)など、すでにアクションや特撮ともいえる作品も印象に残る忘れ難いシェフと言えるでしょう。
皆さまの心にはどんな素敵(?)なシェフの姿が残っていますか?
今回選ばせていただいた、日本ドラマの名(迷)料理人
『天皇の料理番』秋山篤蔵
『鬼平犯科帳』猫どの
『ランチの女王』鍋島兄弟
『バンビ~ノ!』伴省吾
『アンティーク~西洋骨董洋菓子店~』小野裕介
『信長のシェフ』ケン
『明日もきっと、おいしいご飯~銀のスプーン~』早川律
『ごちそうさん』西門め以子
『王様のレストラン』磯野しずか
『ハングリー!』山手英介
文/藤原ゆうこ