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メンバー脱退を乗り越え突き抜ける!脱力支援アイドル「ゆるめるモ!」が迎えた大きな変化

日本タレント名鑑 2016年7月29日 10時55分

最近、テレビ東京の「ほぼほぼ ~真夜中のツギクルモノ探し~」に毎週のようにメンバーが出演している4人組アイドルグループ・ゆるめるモ!。メディア露出だけ見れば、2016年に入ってからのゆるめるモ!は順風満帆でしたが、テレビに映らない部分で彼女たちは激動の時期を過ごしていました。いや、今この瞬間もまだ過ごしているのかもしれません。

ながらく6人体制で活動してきたゆるめるモ!でしたが、2016年7月10日をもってメンバーが2人脱退。そして、けちょん、しふぉん、ようなぴ、あのの4人がゆるめるモ!に残ることになりました。一時は8人もいたメンバーが4人になるという逆境。現在メンバーは、それを乗り越えようとしているように感じられます。

結成~新メンバーの加入

私がゆるめるモ!のプロデューサーの田家大知に初めて会ったのは、2013年1月9日に阿佐ヶ谷ロフトAで開催された「東京アイドルプロデューサー新年会2013」というイベントで司会をしたときでした。イベント終了後、最近アイドルの運営を始めたという男性が挨拶に来てくれたのです。彼こそが田家大知でした。そして、運営をしはじめたというアイドルがゆるめるモ!。ほどなく、雑誌「TRASH-UP!!」でもゆるめるモ!はカラー写真入りで紹介されていて、展開の早さを感じたものです。

2013年の秋、ゆるめるモ!の現場へ行かなければと感じる事案がふたつ起こりました。ひとつは、新メンバー5人の加入。その中には、現在もゆるめるモ!のメンバーである、しふぉん、ようなぴ、あのがいました。

サイケデリックな楽曲と鮮烈なステージ演出

もうひとつは、「SWEET ESCAPE」という楽曲のMVの公開でした。「SWEET ESCAPE」は、10分に及ぶMVにメンバーがまったく登場しません。しかも、「SWEET ESCAPE」という楽曲は、1970年代にドイツで活動していたノイ!というバンドを連想させるようなクラウト・ロックなのです。

2014年1月5日に新宿ロフトでようやく見ることができた「SWEET ESCAPE」は、ゆるめるモ!に多数の楽曲を提供しているハシダカズマ(箱庭の室内楽)によるサイケデリックなギター鳴り響く中、さらにヲタのMIXも加わったため、音響的な興奮が増幅されました。そして、「SWEET ESCAPE」を歌い踊るゆるめるモ!は当時8人体制(ひとり休んでいたのでステージにいたのは7人でしたが)。10分の楽曲の終盤、彼女たちが喧嘩でもするかのようにお互いを突き飛ばしあい、衣装の白い上着を脱がせあって、「真っ黒な女の子たち」となって終わる演出は、鮮烈なものがありました。

それから約2年半。2016年7月10日、私は新木場STUDIO COASTで再び「SWEET ESCAPE」を見ていました。この日のゆるめるモ!は、すでに6人体制に。そして、この日をもってメンバー2人が脱退するというライヴでした。二部構成で50曲近い楽曲のすべてを歌うライヴの中、この日もゆるめるモ!は「SWEET ESCAPE」の最後で「真っ黒な女の子たち」になっていました。

ゆるめるモ!というグループは、もともと「脱力支援アイドル」を標榜する「ゆるい」グループでした。メンバーのひとりひとりが醸しだすゆるさと、田家大知がプロデュースする楽曲群に込められた過剰なまでの情報量のコントラストが、ゆるめるモ!というグループの大きな特徴でした。

コアな楽曲提供陣

2015年にリリースされたアルバム(結果的には6人体制での最後のアルバムです)の「YOU ARE THE WORLD」には、ハヤシヒロユキ(POLYSICS)、後藤まりこ、緑川伸一(ミドリカワ書房)、Koji Nakamura(ex.SUPERCAR)らが楽曲を提供していました。また、ワンマンライヴでは、大人数のバンドが演奏するため、ステージに20人以上がいることも。基本的にゆるめるモ!は、アルバムもライヴも、田家大知が盛って盛って盛りまくり、慢性的なインフレを起こさんばかりのグループでした。アイドル界のラーメン二郎というか……。

MV「サマーボカン」でのシーン

2016年7月10日のワンマンライヴは、そんなゆるめるモ!の集大成でした。二部の最後には、スタッフによってフロアへ大量の風船が投げこまれ、鮮やかに舞っていました。そして終演後、スクリーン上に流されたのは、この日リリースが発表されたミニ・アルバム「WE ARE A ROCK FESTIVAL」の収録曲「サマーボカン」のMV。「WE ARE A ROCK FESTIVAL」で歌っているのは、ゆるめるモ!に残る4人のみです。複雑な気持ちを抱えながら、4人だけが登場する「サマーボカン」のMVを見ていたところ、MVの最後の最後に、脱退する2人が登場したのです。衝撃的でした。なんという素晴らしい送り出しができる運営チームなのだろうと、感銘を受けた瞬間でした。

この「サマーボカン」のMVは後日YouTubeでも公開されましたが、脱退する2人がホームで手を振るシーンと、残る4人が車窓から緑の樹々を見るシーンは、実はほんの数秒しかないことに気づかされました。ライヴ会場で見たこのシーンは、とてもとても長く感じられたのです。

メンバーの脱退…そして選んだ大きな変化

2016年7月10日の新木場STUDIO COASTは満員でした。メンバー2人が脱退するセレモニーであったことに加えて、最近のゆるめるモ!のメディア露出も大きく影響していたのでしょう。特にメンバーのあのは、ゆるめるモ!を知ってもらう入り口になればいいと、モデルなどのソロ仕事も多数しており、すでにポップアイコン化していると言えます。気づくと彼女のTwitterのフォロワー数は14万人に近づこうとしていました。東京都青梅市の人口並みです。

そして、2016年7月10日を境として、ゆるめるモ!が大きな変化を迎えたのだろうと感じるのには理由があります。メンバー2人の脱退が発表されたとき、ゆるめるモ!の運営チームは、「結成当初からの『メンバーひとりひとりがやりたいことを実現していく場(個人の成長)』としての役割にいったん区切りをつけ」ると明言したのです。ゆるめるモ!が選んだのは、変化することでした。しかし、「自殺するぐらいなら逃げてもいい」というメッセージを機能させるために田家大知が作ったのがゆるめるモ!というアイドルグループであり、ゆるめるモ!のそうした思想性が代表曲「逃げろ!!」を生み出したことを、私たちは忘れてはならないでしょう。

今のゆるめるモ!は、「逃げない」という覚悟すら感じさせます。緊張感に満ちたゆるめるモ!がどこに向かうのか、少しだけ心配になりながらも、しかし、それ以上に期待したいのです。それは、4人が結束して進むこの夏、一気に突き抜けていく予感もするからなのです。

◆文/宗像明将

1972年生まれ。「MUSIC MAGAZINE」「レコード・コレクターズ」「Yahoo!ニュース個人」などで、はっぴいえんど以降の日本のロックやポップス、ビーチ・ボーイズの流 れをくむ欧米のロックやポップス、ワールドミュージックや民俗音楽について執筆する音楽評論家。近年は時流に押され、趣味の範囲にしておきたかったアイド ルに関しての原稿執筆も多い。

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