バラエティ番組などでも人気の“ももち”こと嗣永桃子さんが、今月、自身が所属するハロー!プロジェクトの「カントリー・ガールズ」のライブにて、来年6月30日をもってグループおよびハロプロから卒業することを発表。卒業後は以前から関心があったという幼児教育の勉強をし、いずれそちらの分野に進みたいと話しました。事実上の引退宣言となりますが、テレビでの彼女のイメージからすると意外に思える選択だったかもしれません。ですが記者として彼女を何度も取材した立場からすると、ある意味、彼女らしいとも思えます。取材を通じて見た彼女の素顔を紹介します。
Berryz工房で正統派アイドルとしてデビュー バラエティに出始め“イラドル”として注目
嗣永さんは現在24歳。2002年に、「ハロー!プロジェクト キッズオーディション」に合格したことをきっかけにハロプロ入りしました。この合格発表が、嗣永さんの卒業日である6月30日。丸15年で芸能活動にいったん終止符を打つ形となります。嗣永さんは同オーディション合格後、2004年にBerryz工房のメンバーとしてメジャーデビュー。また2007年には3人組ユニット・Buono!のメンバーにも選ばれています。
デビュー以来、メンバーの中でも特に正統派アイドルとして人気者になりましたが、2011年に『めちゃ×2イケてるッ!』に出演、加藤浩次さんに投げ飛ばされたり体当たりの奮闘をし、バラエティでも注目されるようになりました。
バラエティに出始めの頃は、周りのキャストをイラつかせるぶりっ子キャラで、“イラドル”とも呼ばれました。どちらかといえばネガティブな目で見られることが多かった嗣永さんですが、次第に「許してにゃん!」のフレーズとともに、その独特のキャラクターがお茶の間にも認められるようになっていきました。
テレビで見せる顔とは違い、実は堅実な「気配りの人」
一見ふわついた女の子のように見えて、それはあくまでも“ももち”としてのキャラクター。実生活では大学に通い教育実習も経験し、大学卒業と同時に教員免許を取得しています。また、「周りへの気配りがとてもできる人」として業界内での評判もいい嗣永さんです。
現在はカントリー・ガールのプレイングマネージャーとして、10代が多いメンバーたちの魅力を引き出すべく、愛情をもって盛り上げています。
筆者がカントリー・ガールズのデビュー時にインタビューさせていただいた際、デビュー間もなくで、緊張して口数が少ないメンバーたちのために、率先して場を盛り上げ、全メンバーに記者の目がいくように、まんべんなく話をふったり発言にツッコミを入れたりしていたのが印象的でした。
ところがデビューから1年半を経た、今年9月に行ったインタビューでは、嗣永さんの次に年長の山木梨沙さんが中心になって話を進める中、嗣永さんは一歩引いてそれを見守る感じでした。この頃にはすでに次の世代に牽引役を移譲する思いはあったのでしょう。ですが、要所要所で面白コメントを挟んだり、膨らませられそうな話になると“ももち節”でぐいぐいと入ってきてくれる、とても盛り上がったインタビューとなりました。また、メンバーに会話の中でちょっとした“ボケ”を投げかけたものの気づかれなかった際、横で聞いていた嗣永さんがすかさず拾ってツッコんでくれるなんてこともありました。
視野広く場を見て、面白いコメントをするのは記者会見の場で特に発揮されます。その場全体を盛り上げるのはもちろん、会話の中でさらっと見出しになりそうなコメントを入れてくる上手さ。その頭の回転の速さはハロプロでは、モーニング娘。前リーダー・道重さゆみさんに共通する才能です。
Berryz工房時代から歌手としての評価も高い
一般的にはバラエティでの活躍の印象のほうが強い嗣永さん。一方歌手としてはデビュー12年のベテランです。近年、カントリー・ガールズとしては、高い声で可愛く歌うケースが目立ちますが、Berryz工房時代は、高低幅広い音域で、ボーカリストとしてのカッコよさを実感させられる場面も多かったです。
デビュー前から嗣永さんのファンだったというHKT48の指原莉乃さんも「バラエティのイメージが強いかもしれないけど、私の中ではずっとパフォーマンス最高な完璧なアイドル」と語っています。
休日には自室に“引きこもり”状態!? プライベートは明かさない
テレビやステージでは「前へ前へ」のキャラクターですが、実は休日には、自分の部屋からほぼ一歩も外出しないという、内向的な女性。インタビューでは「自分の部屋が好き。一番落ち着く場所です」と語っていました。プライベートでメンバー同士で遊びに出かけるようなこともなく、Berryz工房時代も11年間活動していて、メンバー全員で遊びに行ったのは活動休止直前の一回のみだそうです。
またグループとしてのブログは書いていますが、個人のツイッター、インスタグラムなどのSNSは行っていません。その理由として「アイドルってプライベートをあまり明かさないほうが謎めいていていい。『もっと“ももち”のことを知りたい!』という気持ちになるから」と、おどけた調子で語っていました。
テレビ番組『ヒルナンデス!』に“どケチ”アイドルとしてたびたび出演。その堅実な生活ぶりを匂わせる言動が印象的ですが、それもどこまでがリアルで、どこまでがテレビ用キャラなのか難しいところです。積極的にプライベートの様子をSNSで更新しているアイドルも、そこで出していることすべてがその人の素ではないと思いますが、嗣永さんはテレビ用キャラと実生活との棲み分けはとりわけ徹底している印象です。
一見、芸能人っぽさいっぱいの雰囲気を出しながら、テレビの“ももち”とは別に、一人の20代女性・嗣永桃子をしっかりと持っている。ハロプロの後輩はもちろん、アイドルとして嗣永さんをリスペクトする人も数多くいます。今回の彼女の選択はアイドルの進路の選択に大きな影響を与えるのかもしれません。
文/田中裕幸