2017冬ドラマ「レンタルの恋」の放送が終わりました。最初から謎多き主人公でしたが、最終回までの怒涛の展開に驚いたファンも多いのではないでしょうか?主演の剛力彩芽さん演じるレミは、レンタル彼女としてナンバー1を張り続けるほどに超優秀。どんな相手でも、相手の好みの格好・性格に変化し対応する事で、彼女と一度でもデートした相手は、彼女から離れられなくなってしまうのです。
そんなドラマ「レンタルの恋」ですが、個人的に特に興味が沸いたのがこの「レンタル彼女」というシステムです。実際の世の中でもサービスとして存在しているようですし、これがどのようなシステムで、サービスとしてどのような扱いになるのか、派遣法・風営法の観点から弁護士の先生に聞いてみました。今回お話をお伺いさせていただいたのは、アディーレ弁護士事務所の岩沙好幸先生です。
--記者
そもそもこのドラマにあるような「レンタル彼女」というビジネスは、法律的にはどういった見解になるのでしょうか?いわゆるスタッフを派遣しているだけの単なる「人材派遣」ビジネスなのでしょうか?
--岩沙先生
レンタル彼女とは、指名したキャストと手を繋いで街を歩いたり、食事をしたり、映画を見たり、カラオケをしたりなどまるで恋人同士のような雰囲気でのデートを楽しむことができるサービスをいいます。
一方、人材派遣とは、労働者派遣契約の締結や厚生労働省の許可など労働者派遣法で定められた手続きを必要とするものですが、レンタル彼女は特に行政の許可等を必要としないので、いわゆる人材派遣とは異なります。イメージ的には、家事代行など様々なサービスを提供する便利屋の派生形のようなものでしょうか。
--記者
「レンタル彼女」や「デートクラブ」では、恋人同士のような疑似恋愛、疑似デートをおこなう事になるかと思いますが、その内容はどこまで許されるのでしょうか?デートする、手をつなぐ、密室で2人きり、キスをする、体に触れる、肉体関係を結ぶなど、一言でデートといってもその幅は相当広いと思います。改めて、法的なルールを教えて頂けますでしょうか?
--岩沙先生
レンタル彼女は、風営法で定められている手続きを踏んでいないため、風俗営業や性風俗関連特殊営業をすることはできません。したがって、店舗を設けて接待したり性的サービスを提供することは許されません。その余のサービス内容は会社の規約によって異なりますが、ハグ・キス・体に触れる・必要以上に体を密着させる行為を禁止しているところがほとんどでしょう。
--記者
改めてお聞きします。いわゆる風俗店というのは、法的にどのような扱いになるのでしょうか?世の中の一般的認知として、本番行為を許容されているのがソープランドで、ファッションヘルスなどそれ以外の風俗店では本場行為を禁止されている、漠然とそのような認識なのですが、法律的に何かしらの差別化ポイントがあるのでしょうか?
--岩沙先生
性風俗店は、風営法で規制されています。ソープランドは、浴場業の施設として個室を設け当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業、ファッションヘルスは、個室を設け当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業などと定められています。
一般的に、ソープランドでは本番行為が認められていると思われがちですが、売春防止法との兼ね合いから、店が本番行為を管理することは法律で禁止されています。したがって、店は、お客さんに対してあくまでお風呂場を提供するだけであり、入浴料だけを徴収しています。一緒にお風呂に入っていたら、お客さんとキャストがたまたま恋に落ちて肉体関係に発展しただけであり、本番行為とお店とは無関係なのです。もちろん、ファッションヘルスでも本番行為は禁止されています。
--記者
最後にもうひとつ。ビジネスとして成り立たないので本来はありえないと思うのですが、仮に上記のように法的に禁止されている行為が、有償ではなくすべて無償でおこなわれた場合、それは個人的なデートやお付き合いとなんら変わらない状態になると思います。そのような場合の法律見解はどのようになるのでしょうか?
--岩沙先生
風営法で禁止されているのは前述のサービスを「営業」として行う行為です。営業とは反復継続的に営利を追求することですので、常に無償であり営利を全く追求していないのであれば風営法の規制の対象外です。また、売春とは対価を払って肉体関係を結ぶことですので、無償であれば売春にもあたりません。したがって、本当に無償であれば風営法、売春防止法上は問題ないことになりますね。
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というワケで、今回は“派遣法・風営法”について、弁護士の岩沙先生に色々とお話を伺いました。ソープランドのシステムについては非常に驚きました。まさか、店はお風呂場を提供するだけで、お客とキャストがたまたま恋に落ちていただけだったとは思いませんでした。また、レンタル彼女に関しては、法的なルールというより、細かい部分は店ごとの規則によるところが大きいようです。最近では結婚式の参加者などもレンタルするケースが増えてきていると耳にします。この人材レンタルサービス、一体どこまで派生していくのでしょうか?
・取材協力
岩沙好幸(いわさよしゆき)弁護士(東京弁護士会所属)
弁護士法人アディーレ法律事務所