撮影/Jumpei Yamada
6人組ガールズグループ「東京パフォーマンスドール」が9月いっぱいで活動を休止、9月末にはラストライブが行われました。約8年にわたり活動してきた彼女たちが、グループとしての最後のライブの夜に何を見せ伝えたか、そして活動休止後それぞれソロとして活動するメンバーたちへの期待を記します。
★90年代、篠原涼子さんらのブレイクで注目 そのDNAを引き継ぎ8年間活動したメンバーたち
1990年に結成された東京パフォーマンスドール(TPD)。当時ライブハウス「原宿RUIDO」を拠点に“ダンスサミット”と銘打った、MCなしのノンストップでのパフォーマンスというスタイルのライブが話題になりました。結成時には洋楽のダンスミュージックのカバーを中心にパフォーマンス。当初はテレビなどのメディアに出ることはほとんどなく、活動の中心はライブハウス。今でこそ“ライブ・アイドル”といわれるグループは多数存在しますが、当時は異色の存在として見られていました。
結成2年目からフロントメンバーが篠原涼子さん、市井由理さん、穴井夕子さんら7名に固定され、その頃からその個性的なライブスタイルにより認知度が高まり人気が上昇、結成4年目の1993年には日本武道館公演を2日連続で開催しています。
そして1994年に篠原さんがシングル『恋しさと せつなさと 心強さと』でブレイク。その勢いも後押しし、人気はさらに拡大し、横浜アリーナ公演も実現。ですが、その後人気メンバーの卒業が相次ぎ、1990年代後半には自然消滅的に活動を終了しました。
それから15年以上の時を経て、2013年、8800人が参加したオーディションを通して選ばれたメンバーで“新生”東京パフォーマンスドールが結成されました。
結成当初から“先代”の持ち味であった、“ダンスサミット”と同形式のライブを開催。じわじわとファンを集めていき、2014年には『BRAND NEW STORY』でメジャーデビューを果たします。メジャーデビュー後は9人で活動していましたが、2018年に3人のメンバーが卒業し、以降は6人体制で活動を続けました。
★今年5月無期限の活動休止を発表 それぞれがソロ活動を活発化へ
その“新生”東京パフォーマンスドールは“先代”を上回る8年間活動しました。武道館や横浜アリーナのような大規模会場でのライブは実現することはなく、大ヒット曲があったわけではありませんが、地道な活動を積み重ねるなかで熱い思いをもったファンを数多く獲得していきました。
毎月のようにライブを行い、その“ダンスサミット”が活動のメインだったTPD。ですが、2019年6月の6周年ライブを終えた頃から、グループとしてのライブやリリース活動は減り、舞台出演など個人の活動が増えてきました(今思えば、この頃から次へのステップに向けての準備が始まっていたのかもしれません)。
そして2020年初頭からのコロナ禍でライブ活動が制限され、2020年は配信によるライブがメインに。11月の対バンライブまで有観客ライブは実施できませんでした。ライブでの盛り上がりが一番の持ち味であったTPDにとっては大きな痛手となったことでしょう。
そして今年5月、TPDは無期限の活動休止を発表しました。メンバー個々の活動の幅を広げてきたのに加え、コロナの影響によりグループとしての音楽活動や、ライブ、イベントの開催を十分に行うことが難しい状況となる中、メンバーとスタッフが話し合いを重ねた結果、各人の個性をより前面に出した活動を行うにあたりグループ活動を休止させ、それぞれの個人活動を活発化させていくという結論に至ったといいます。
リーダーの高嶋菜七さんは、このとき「みんなと過ごしたこの日々は宝物です。次のステップへ進むためにみんなで話し合い決断したことなので、決めた以上これからはグループから離れても自分自身に負けず頑張っていきたいです」とコメントしていました。
そして9月のラストライブが近づくにつれて「毎日ライブのリハーサルをしていて、それが今までは当たり前のことだったのですが、一回一回が尊いというか、メンバーと過ごす時間をすごく大切で貴重だなと思いながら歌って踊ってます!」(GirlsNews、9月21日)と思いを明かしてくれました。
また浜崎香帆さんは「ファンの皆様に全力で楽しんでもらえるように、そして悲しむのではなくて全員が笑顔で新たなスタートラインに立てるようなライブにしたいと思っています!」(同)と意気込みを語りました。
★最後のライブも変わらないノンストップスタイル その中にエモーショナルな空気
そして迎えたライブ当日。そのオーラスの夜公演でも、序盤からラストライブらしいしんみりしたムードはあまりなく、いつものダンスサミット同様、ノンストップでTPDの代表曲、人気曲が次々と披露されていきます。メンバーたちの表情からもいつもと変わらない、“ライブをできることが楽しくてしょうがない!”といったイキイキさがうかがえます。中盤では“先代”から引き継いだ名曲の数々をメドレー形式で歌い踊り、ファンを喜ばせました。
ですが中盤、美しいドレス姿で披露した『my dearest』から“卒業”ムードが高まっていきます。ステージのスクリーンには、この日のメンバーたちの気持ちを表したような同曲の歌詞が綴られ、この日のライブに向けた6人の様子を写した写真が投影、曲の最後には各メンバーからファンに向けたメッセージが映し出されました。
そして後半は、やはり勢いたっぷりのナンバーをノンストップで披露。ですが、披露された曲は、歌詞やその内容がエモーショナルなナンバー続き、メンバー、ファンともに“その時”がやってくるのを感じながら、ライブを楽しみます。それぞれにそのときどきの曲にまつわる思い出が頭を巡っていたのかもしれません。
そしてメジャーデビューシングル『BRAND NEW STORY』でノンストップの音楽がいったん止まり、アンコールのステージへ。変わらない、キレのいいダンスパフォーマンスを見せたのに続き、“新生”TPDとして初お披露目のときに披露した、思い出の楽曲『ダイヤモンドは傷つかない』を思いを込めて歌いました。
その後、メンバー一人一人からファンへ向けてのメッセージ。元気いっぱいだったメンバーたちもやはりしんみりとなり、みんな涙まじりで思いを伝えていきます。そんななか上西星来さんは「今スッキリしてて……」とサバサバした様子。ただ「一番寂しいことは……」と語り始めると、やはり声は涙まじりに。「この6人でもうステージが作れないと思うと寂しいって思いました」と思いを語りました。
そして挨拶の最後を締めくくったのはリーダーの高嶋さん。「たくさんアイドルグループがいる中で、TPDを見つけて、応援してくださってありがとうございます。ファンの皆さんは私たちの宝物です。これからは6人それぞれ巣立っていきますが、これからも6人の未来を応援していただけたら嬉しいです」とファンに感謝の気持ちを伝えました。アンコールのステージが終わっても鳴り止まない拍手。最後に思い出深い『BRAND NEW STORY』を再度披露し、6人で最後のステージに幕を下ろしました。
★ 6人の今後の幅広いソロ展開に期待 高嶋さん、上西さんはじめ女性ファンからの人気の高まりにも注目
この日のライブでグループ活動の幕を閉じたTPDですが、上記で浜崎香帆さんが語ったように、スタートラインに立った夜でもあります。これから個人で活動していく6人の今後に改めて期待したいところです。
“新生”TPDがスタートした当初は、“先代”を応援していた人をはじめ男性ファンが中心でしたが、活動後半は女性ファンも増えていました。2017年ごろから、それまでの“純白衣装”“黒髪”“夢に向かって…系の歌詞”の路線から、ファッションや髪色など同性から憧れられるような路線で、恋愛ソングも歌うようになりました。そういった動きだけでなく、メンバーの上西星来さんがファッションや美容モデルとして活躍したり、高嶋さんが女優として地位を築いていくなど個々の活動の展開が広がっていくことでその魅力が同性にも浸透していきTPDの支持層を広げていったと思われます。
6人とも基本的にはこれまでのソロ活動の中で力を入れてきたことを継続してやっていくのではと思います。ですが、完全にソロになったことを機に、これまでになかった活動も楽しみにしたいところです。たとえばデビュー前にはソロ歌手になりたいと考えていたという浜崎香帆さんのソロでの音楽活動や、高嶋さんの面白いキャラクターを活かしたバラエティ出演などなど……。メンバーたちはまだ20代。いろんな可能性があると思いますので、それぞれが進む道を楽しみに見続けたいと思います。
文/田中裕幸