(画像:新谷ゆづみ 映画『(Instrumental)』より)
今月終了した人気ドラマ『警視庁・捜査一課長』(テレビ朝日系)で第一話、第二話にゲスト出演し、その演技や可憐な雰囲気で注目された新谷ゆづみさん。今月は出演映画『(Instrumental)』も公開されます。アイドルグループ「さくら学院」を卒業して3年。女優として着実に成長を続ける彼女の歩みと持ち味を紹介します。
★“捜査一課長”での謎めいた雰囲気としっかりした演技で強い印象を残す
ドラマ『警視庁・捜査一課長』の第一話と第二話で、個人投資家(小手伸也)殺人事件がきっかけとなったエピソードに登場した新谷さん(その後、第五話と最終回にも出演)。“タイムトリップ”を扱った複雑でユニークなストーリーの中、新谷さんはどこか謎めいた雰囲気を持つ、企業のコールセンターでアルバイトする女性“はるな”を演じました。はるなはその事件の真実に翻弄されていきますが、難しい役柄を見事に演じきりました。独特の存在感を発揮し、視聴者に強い印象を残しています。
劇中、はるなはほとんど笑わない印象の役柄でしたが、第二話で事件の真相が見えてくるのに連れて、少し笑顔を見せてきます。可憐な雰囲気のルックスの彼女ですが、これまで演じた役柄は比較的笑顔が少なかったり、何かを抱えているような役柄が多い印象。今年公開された初主演映画『⿇希のいる世界』でも、重い持病を抱え、⽣きることへの希望が持てない⾼校2年⽣の少女役を演じています。
こういった役柄が多いことについて新谷さんは「やりやすい気がします」と語ります。「私自身、性格がものすごく明るいです!というタイプでもないので……」とのことです。
“捜査一課長”第二話の終盤で見せた笑顔はとても輝いていましたが、これには90年代の名作ドラマ『ロングバケーション』(フジテレビ系)で、木村拓哉さん演じるピアノ講師に対して常に拗ねたような態度で、笑顔がない少女を演じた広末涼子さんが、最後の別れのときにだけ見せた笑顔がとても輝いていたのを、ふと思い出しました。いつの時代も、美少女女優を輝かせる王道の見せ方といえるのかもしれません。
同じ事務所で、同じデビューのきっかけ(『ちゃおガールオーディション』出身)の山田杏奈さんも同じく、可憐なルックスながら何かを抱えているような役柄がハマる女優ですが、そんな山田さんに新谷さんは憧れて
尊敬しているといいます。
★「さくら学院」の中心メンバーとして活躍 演技の楽しさにめざめたきっかけは?
新谷さんは2003年生まれの18歳、和歌山県出身。2014年少女漫画雑誌『ちゃお』(小学館)主催の『ちゃおガール2014☆オーディション』で準グランプリを受賞したことをきっかけに芸能活動を開始しました。
この“ちゃおガール”の受賞者でアイドルグループ「Ciào Smiles」を結成。2016年には小中学生による“成長期限定ユニット”「さくら学院」のメンバーに加入、“生徒会長”(リーダー)を務めるなど中心メンバーとして活躍し、2019年3月まで在籍しました。卒業の際に新谷さんはじめメンバー3人で発売した写真集は、アイドルに強い書店“書泉”の女性写真集の月間売上ランキングで1位になるなどヒットしました。
その後本格的に女優活動を開始。映画『さよならくちびる』(2019年)、『麻希のいる世界』(2022年 ※主演)、『やがて海へと届く』(2022年)、ドラマ『卒業式に、神谷詩子がいない』(日本テレビ/2022年)などの作品に出演しています。
彼女が女優を志したのは、この世界に入って以降だといいます。小学生のときに受けた『ちゃおガールオーディション』はどちらかといえば好奇心から応募した感じだったのが、「さくら学院」の活動を通して意欲が高まっていきます。女優になりたいと思い始めたのは、特に誰か、活躍している女優に影響を受けたのがきっかけというのではなく、なんとなく自然な流れで女優を目指し始めたとのことです。
とはいえ、きっかけになったものもあったようで、それは「さくら学院」時代に受けた演技レッスン。さくら学院のレッスンは歌とダンスが中心でしたが、ときどき演技のレッスンも行われたようで、「そのレッスンがものすごく楽しかったんです! 緊張するタイプなので、最初は“どうしよう、演技レッスンに行きたくない”って思っていたんですけど、終わったあとに“あ、ヤバい、楽しい!”という気持ちになってバスで帰るというのが毎回でした」(GirlsNews、6月掲載/以下同)と当時を振り返ってくれました。
その演技レッスンの影響は大きかったようで……。「たまに行って楽しいと思えるお芝居って、意識してなかったけど、何か好きになる要素があるんだろうなと思って」と語ります。特に楽しかったと感じたのは「掛け合いのお芝居」。「普段人見知りで、初めて会った人とはあまり話せないんですけど、芝居だったらいくらでもいけるんですよ(笑)。それが楽しくて。なんの恥じらいもなく、初めての人にどんな言葉をかけてもいいという、その自由さが私の心を開放してくれる源」と、人見知りだった彼女の背中を押す大きな存在となったようです。
★3年前撮影の映画が公開 難しい役柄を表現
そんな新谷さんが3年前に出演した映画『(Instrumental)』は今月25日より公開されます。
一人の新米新聞記者の青春と喪失を、現在と過去を複雑に行き来しながら描き出した同作。基になったのは監督の宮坂一輝氏が高校生のときに書いた脚本で、大学進学後に映画サークルのメンバーを集め製作されました。
新米新聞記者の真知子(秋田ようこ/八木優希)は、ある日訪れたコインランドリーで男子中学生の岡孝汰(黒澤凜士)と知り合う。自然と心を通わせていく二人ですが、真知子は次第に、孝汰が自分の幼いころの親友と同じ雰囲気を持っていると感じ始めます。その親友が新谷さん演じる佳子。佳子は少女時代の真知子の成長の中で精神的に大きな波紋を残す存在となっており、演じるのに難しそうな印象の役柄。新谷さんは「セリフも多くなかったので、真知子とのやりとりの雰囲気の中で、二人の関係性を作り上げるということが難しかったです」と振り返ります。
この作品が撮影されたのは3年前で、小学生や中学生の役を演じる新谷さんは、今より随分と幼い印象。当時はまだ演技経験も浅かった中での出演でしたが、決して多くない出演シーンながら、佳子が心に抱える悩みを二人のやりとりの中から滲ませます。
作品全体について新谷さんは「すごく静かな印象の作品なんですけど、その静かさが胸を打つというか、静かだからこそ、ゆっくり深く考えさせられる映画だなと思います。セリフが多いわけではないからこそ、一つ一つの言葉、場面を考えさせられ、強く何かを訴えかける作品だなと思いました」とコメントしています。
新谷さん出演の映画『(Instrumental)』は25日より池袋シネマ・ロサにて公開。
文/田中裕幸