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素直な歌声と、作品を演じるように歌う物語感 歌手・森七菜の魅力

日本タレント名鑑 2022年10月5日 17時11分

人気女優である一方、歌手としても活躍する森七菜さん。8月31日、自身21歳の誕生日に初のフルアルバムをリリース、そして9月末には地元・大分と東京でファーストライブを行うなど、今年は歌手としての活動が目立っています。2020年に歌手デビューして2年半。改めて歌手としての森さんの魅力を紹介します。

■1stアルバム発売、初ワンマンライブ……今年は歌手としての活動が目立つ

森さんは2016年、地元の大分でスカウトされたことをきっかけに芸能活動をスタート。2019年、ドラマ『3年A組-今から皆さんは、人質です-』(日本テレビ系)、そしてヒロイン・陽菜の声を演じた映画『天気の子』(新海誠監督作品)で一気に注目度を上げました。その後も『ラストレター』(岩井俊二監督作品)など多数の映画に出演。2020年には『この恋あたためますか』(TBS系)で連続ドラマ初出演、人気女優の座を不動のものとしました。

一方歌手としては、上記『ラストレター』の主題歌『カエルノウタ』で2020年1月にデビュー。作品の世界観に合った内容で、作詞は監督の岩井俊二さん自らが手掛けました。作曲はヒットメーカーの小林武史さん。荘厳な雰囲気のサウンドに乗せ、物語を語るように歌う森さんの歌声が印象的で心に染み入ります。映画で共演した福山雅治さんは、そんな森さんの歌声について「透明感、瑞々しさのある歌声」と絶賛していました。

セカンドシングルは、本人が出演した「オロナミンC」のCMソング『スマイル』。人気アーティスト・ホフディランが1996年にリリースしたメジャーデビュー曲のカバーで、CMのコンセプト通り、彼女の“元気ハツラツ”な面が出た楽曲となっています。この曲は彼女の代表曲となり、今でもテレビの歌番組で歌われるケースも目立ち、カラオケでも人気となっています。

9月に音楽動画サイト「THE FIRST TAKE」にて一発撮りで同曲を披露しましたが、初期のひたすら元気な感じから、アレンジの影響もあり、さらに味わい深い歌声に進化しています。

昨年後半からは歌手活動にさらに力を入れ始め、YOASOBIのコンポーザー・Ayase氏プロデュースの『深海』、ブレイクのきっかけとなった『天気の子』の新海誠監督が歌詞を手掛けた『背伸び』を立て続けに配信リリース。

今年6月には森山直太朗さんが作詞・作曲を担当した『bye-bye myself』を配信リリース。森さんをイメージして書き下ろされ、爽快感のある軽やかなサウンドの中で、前を向いて行く気持ちを歌った楽曲となっています。森山さんとは、ともに朝ドラ『エール』に出演している関係性です。

そして森さんの21歳の誕生日でもある今年8月31日、待望の1stフルアルバムをリリースしました。その名も『アルバム』。このユニークなタイトルには「このアルバムが、皆さんにとっての思い出の写真のアルバムを開くような感覚で聴いていただけたらと思い制作し、タイトルを『アルバム』と名付けました。(中略)どんな日も、いつの時にも十人十色の思い出が詰まっている。皆さんに届いて皆さんの気持ちが染み込んで、初めて完成する作品になっています」との森さんの思いが込められています。アルバムには上記シングル曲のほか、Puffyのヒット曲のカバー『愛のしるし』などアルバム新曲5曲が収録されています。

■女優の彼女が歌うからこその豊かな表現力 楽曲が持つ物語性が伝わる

森さんは歌手デビューしてすぐ、人気音楽番組『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)に出演。『カエルノウタ』を歌唱しました。技術的にすごく上手というわけではありませんが、岩井さんが作詞した『ラストレター』とリンクした詞の世界を演じるように歌う姿は多くの視聴者の心に“刺さった”ようで、SNSでも話題となりました。

一曲の中でも、序盤のやわらかい雰囲気からサビ以降の思いを強く込めた歌唱まで一本の“作品”を演じたような歌い方でした。歌の終盤では涙ぐんでいた森さん。大きな緊張感の中やりとげた安堵もあると思いますが、歌の主人公の気持ちに入り込んだゆえの涙だと、当時観ていて思いました。

以降『ミュージックステーション』のほか、『CDTVライブ!ライブ!』(TBS系)、『うたコン』(NHK)などの人気音楽番組に出演。今年9月に出演した『ミュージックステーション』では『愛のしるし』を披露。緊張感はもちろん見せつつも、楽しそうに歌う姿が印象的で、思わずニコニコとさせられる、ハッピーなオーラに満ちていました。その素直な歌い方はデビュー時から変わらず。声質がちょっとハスキー気味になり、また歌う姿が“90年代の広末涼子さんみたい”というtwitterの声もありました。

アルバムは、収録曲が多彩ということもあり、それぞれ違った歌の表情を見せています。20代になり恋愛を扱った楽曲もしっくりとくるようになり、等身大の女性の心情を上手に表現しています。絵本作家の荒井良二氏が作詞を手掛けた『ロバとギターときみとぼく』では彼女の素直な歌声が楽曲の世界観にマッチして、彼女にしか出せない魅力を放っています。

『愛のしるし』で『ミュージックステーション』に出演した際には、サポートミュージシャンとともにバンドスタイルで楽しそうに歌う彼女の姿が印象的でしたが、アルバム収録の『かたつむり』でも、バンドサウンドと彼女のボーカルの相性の良さを聴かせてくれます。

多彩な楽曲内容と多彩な表現。ガールポップシンガーでもなく、アイドルでもなく、女優である彼女が歌うからこその表現力で、楽曲が持つ物語性が際立ち、聴く人に伝わってきます。女優としてだけでなく、歌手としてもこれからどんな進化を見せてくれるか、楽しみでなりません。

文/田中裕幸

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