レーザーによるマイクロエンジニアリングを研究する、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)Galateaラボの研究チームは、スイスの老翁時計メーカー、ヴァシュロン・コンスタンタンと共同で、時計職人の技を近代化する技術を開発している。
265年間続くこの時計メーカーでは、職人の手による綿密な作業でクリスタルに3D彫刻が施している。研究チームが開発したのは、この工程にレーザーとVRヘッドセットを導入する革新的なシステムだ。
高強度の超短レーザーパルス技術を職人技と統合研究チームは、材料の特性を変えることができる高強度の超短レーザーパルス技術を職人技と組み合わせたいと考え、最初のユースケースに時計制作を選択した。
研究を進める過程で、レーザー彫刻での手の動きの制御は思ったより複雑なことが判明。レーザー光線とデジタルペンだけで、クリスタルに線をエッチングするのは簡単にはいかず、細い線を肉眼で見るのも困難だった。そこで研究チームは、VRヘッドセットを導入し作業を誘導できるようにした(同システムで作業する様子は動画で確認可能)。
ロボットアームで触覚フィードバックを再現その後もシステムの調整が必要で、最大の課題としてペンを動かしたときに物理的な抵抗がないことが浮上。触覚的なフィードバックなしに作業することは職人にとって困難だった。そこで研究チームは、レーザーを使用したときにも材料との相互作用が感じ取れる方法を探ることになる。
研究チームは、外科用ロボット技術を開発するEPFLからのスピンオフ企業、Force Dimensionの協力を仰ぎ、物理的抵抗を再現するデバイスを開発。ロボットアームにデジタルペンを取り付けることで触覚フィードバックを仮想的に再現した。
今後同プロジェクトは、職人による伝統的なノウハウと技巧を保持しつつ、クリスタル内に3D彫刻を施すなどの新たな制作手法を取り込むことを目指して進められる。
参照元:Lasers and virtual reality to revolutionize watch-crystal engraving/ EPFL News