スーパーコンピューターの利用コストは非常に高く、大規模な研究機関や企業などにしか利用できないだろう。こうしたなかサセックス大学の研究者らは、1台のデスクトップパソコンでスーパーコンピューターに相当するコンピューティングを可能にする手法を開発している。
同手法を用いれば、デスクトップパソコンで脳モデルをシミュレートできる。これにより世界中の研究者が、大規模な脳のシミュレーションを実施できるようになりそうだ。
15年前に開発された手法を最新のGPUでスパイク神経回路網モデルによるシミュレーションは、脳の機能の理解を深めるために重要となる。ただし、神経細胞およびその結合(シナプス)の数は膨大で、シミュレーションには数テラバイトのデータ処理が必要になるという。これを1台のデスクトップパソコンで行うのは現実的ではない。
研究者らは、最新のGPUを使用した手法でこの難題を克服しいてる。
同手法は、アメリカの研究者ユージン・イジケヴィッチが2006年に確立した、大規模な脳シミュレーションのための手法をベースにしたものだ。研究者らは、15年前のコンピューターの約2000倍の演算処理能力に達している最新GPUを用いることで、手法の適用範囲を拡大している。
大規模ニューラルネットワークを実行できる可能性も研究者らが作成したスパイク神経回路網モデルシミュレーターでは、GPUの高い演算処理能力を使用して、スパイクが発生した際の結合性と結合荷重を手続き型で生成。これにより、生成データをメモリに保存する必要がなくなったという。
生物学的に1秒に相当する神経活動のシミュレーションは、基底状態で7.7分、静止状態で8.4分で完了。以前のスーパーコンピューターによるシミュレーションよりも最大35%短縮された。
同技術は神経科学者のみならずAI研究者にとっても有用で、機械学習に適用すればゲーミングPCを用いて大規模なニューラルネットワークを実行できる可能性もあるという。
参照元:Supercomputer in your bedroom: Researchers unleash potential of desktop PCs to run simulations of mammals’ brains/ University of Sussex