当初の予測よりも大幅に速められたワクチンの開発。それでも設計期間には1年近くを要している。今後出てくるであろう新たな変異株に対処するためにも、ワクチン設計のサイクルを速める必要があるだろう。
こうしたなか南カリフォルニア大学Viterbi工学部(USCViterbi)の研究チームは、AIを利用してワクチンの分析をスピードアップする手法を開発した。研究チームの発表した機械学習モデル「DeepVacPred」は、これまで数カ月~数年を要していたワクチン設計プロセスの一部を数秒~数分に短縮するものだ。
1時間以内にワクチンの品質を検証現在、ワクチン設計においては、実験室でウイルスを増殖させてこれを不活化。さらには実際にウイルスを注入しての検証がなされており、一連のプロセスには1年以上を要するという。
DeepVacPredは、こうした一連のプロセスを不要にするワクチン設計手法を支援するもの。1分以内に新しいウイルス向けワクチンを設計し、1時間以内に品質を検証できるとのこと。
ワクチンでは、ウイルスの一部分を模したアミノ酸配列をあらかじめ体内に注入することで、免疫反応を誘発する。研究チームによる手法では、機械学習モデルにより候補の中からスパイクタンパク質上の要となる配列を特定し、ワクチンの候補となる設計を選択。最終的に毒性やアレルギー誘発性などを検証するものだ。これによりワクチンの安全性を損なうことなく、迅速に臨床試験に移行できるとのこと。
候補となる調合物の95%を迅速に排除ワクチンは、ウイルスの結合領域(エピトープ)を標的とするよう設計される。
研究チームはDeepVacPredにより、スパイクタンパク質の配列から26種類のエピトープの特定に成功。今回の研究ではB細胞エピトープとT細胞エピトープ、それぞれ1種類ずつを対象にしたものだが、より大きなデータセットとの組み合わせれば、より包括的なワクチン設計ツールを開発できるという。
同手法は、新たな変異株の分析にも適応できるとのことで、進化するウイルスに人類が対抗するためのソリューションとなりそうだ。
参照元:Artificial intelligence aims to outsmart the mutating coronavirus/ USC News
An in silico deep learning approach to multi-epitope vaccine design: a SARS-CoV-2 case study/ nature