網膜の光感受性細胞の喪失に起因した失明には、網膜の神経細胞を電気的に刺激する治療法がある。ただし、現在の網膜インプラント技術では、20度の視野しか得ることができず、通常の生活を送るのに最低限必要な40度に達していないとのこと。
こうしたなか、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)の研究者は、46度の視野と優れた解像度を提供する網膜インプラントを開発。着用者の視野を広げて視力を向上させる可能性がある。
太陽光発電の原理を備えたピクセルでワイヤレスに既存の網膜インプラントでは、メガネに搭載されたカメラで捉えた画像をマイクロコンピュータに送信。電気信号に変換して網膜上に配置の電極グリッドに送る。電極を介して、網膜の神経細胞を刺激することで見ることができる仕組みだ。
研究者によるシステムでも、メガネとカメラを用いるが、網膜インプラントへの配線はない。電極を光起電性のピクセルに置き換えることで、カメラからの画像をワイヤレスで受信。強度、持続時間、波長が特定の要件を満たす光信号に反応し、網膜の神経細胞を刺激する。
太陽光発電の原理を備えたピクセルは、光信号を利用して電流を生成するため外部エネルギー源を必要としない。また、コンピュータによる電気信号への変換も不要となった。
柔軟なポリマーを材料にしてサイズアップ網膜インプラントのサイズは、手術での切開サイズにより制限があった。研究者は柔軟で手術の際は折りたためるポリマーを材料とすることで、より表面積が広く、多くの網膜細胞を刺激できる網膜インプラントを実現している。
ピクセル自体が電極よりも占有スペースが少ないこともあり、より多くを網膜インプラントに配置でき、視野を広げて解像度を高める。
初期テストでは、インプラントが身体への害がないことと、視野および視力を狙い通り改善することが証明された。次のステップでは、ピクセルの動作やインプラントの持続時間などについて調査する計画だ。
参照元:A retinal implant that is more effective against blindness/ EPLF News