これまでのコンピューティングは、チップおよびデバイスのサイズやパフォーマンスが重視されてきた。また昨今では、チップやデータセンターの二酸化炭素排出量も評価基準として挙がっている。ただし、デバイスのライフサイクルまで含めた環境負荷までは、ほとんど意識されていない。
こうした状況から、ハーバード大学ジョン・A・ポールソン工学・応用科学スクール(SEAS)の研究者らは、チップアーキテクチャからデータセンターの設計まで、コンピューティングのあらゆる側面での二酸化炭素排出量を考慮することを提案している。
二酸化炭素排出の大部分はハードウェアの製造工程で発生研究者らは、製造からリサイクルまで、デバイスのライフサイクル全体をマッピング。モバイルデバイスからデータセンター関連デバイスまで、二酸化炭素排出の大部分はハードウェアの製造とインフラストラクチャで発生していることを発見した。
同調査結果は、デバイス製造過程で発生する二酸化炭素排出量を考慮した設計が重要なことを裏付けている。これまでは、コンピューターが使用する電力量の削減ばかりに焦点が当てられてきた。
デバイスの複雑さが二酸化炭素排出量の増加につながる今日のチップは、サイズ、パフォーマンス、バッテリー消費が最適化されている。典型的なものは、約100mm2のシリコンに数十億個のトランジスタを収容しているとのこと。
ただし、消費電力と過熱の観点からすべてのトランジスタを同時に起動するのはむつかしく、常に使用されているのはシリコンの一部だけだ。このいわゆるダークシリコン問題は、製造時の二酸化炭素を余計に排出する意味においても非効率的といえるだろう。
また現在は、アプリケーションの実行をクラウドで行うかローカルで行うかは、パフォーマンスやバッテリー消費の観点から決定される。研究者らは、新たな観点として二酸化炭素排出量を追加すべきとしている。
参照元:Smaller, faster, greener/ Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences (SEAS)